小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

22 沖縄に住む

 沖縄に移り住んで7年になる年下の友人夫妻がいる。東京で同じ会社に勤めていた2人は、10年以上も前に会社をやめ、奄美大島に引っ越した。

 30代前半の2人には語学という武器があった。インターネットが急速に普及したことも追い風になった。奄美にいても、翻訳の仕事ができた。メールで仕事を請け、完成したものはメールで送信する。

  余暇には、畑を借りて野菜作りにも挑戦した。近所の人たちとの交流もうまくこなした。

  奄美に永住する気持ちはなかった2人は、数年後沖縄へと住居を変えた。旅行で訪れた沖縄の自然に心を惹かれたからだ。

  新しい住まいは、沖縄本島の名瀬の近くだ。風が強い高台の一軒家を借りた2人は、翻訳の仕事を続けて沖縄暮らしも板についた。

  沖縄は、鎮魂の島でもある。あの戦争で多数の一般人が犠牲になった。

  戦争を知らない世代の2人だが、ひめゆりの塔を訪れた際には、語り部の話を聞いて、涙が止まらなかったという。友人は沖縄の戦いで亡くなった人たちに対し、深い思いを抱いているのである。

  沖縄は北海道と同様、魅力があり、一度沖縄の生活を体験した人は、「沖縄ファン」になるようだ。先日会った知り合いの司法関係者も、沖縄勤務が忘れられないと、目を輝かして話してくれた。

  自然や食べ物はもちろんだが、沖縄の人たちの人間性がなんとも言えない魅力なのだろう。