小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

35 父親たちの星条旗

  映画「父親たちの星条旗」を見た。クリント・イーストウッド監督の太平洋戦争の最激戦地、硫黄島をめぐる戦いをテーマにした2部作のうちの1作目だ。

  この映画は、以前紹介したノンフィクション作品「硫黄島星条旗」が原作である。アメリカ側の視点で描いた映画であり、日本側については、12月に上映される「硫黄島からの手紙」として、作品化される。

  この戦いで、アメリカの戦意高揚に寄与したのが、摺鉢山に星条旗を掲げる6人の兵士を写した写真だった。6人のうち、3人は戦死したが、生き延びた3人はアメリカの戦時国債を宣伝のためのツアーに狩り出される。

  映画は硫黄島の苛烈な戦闘と、英雄として祭り上げられ、国債宣伝の旅で苦悩するた3人の姿を交互に映し出していて、戦争とは何かを考えさせられる。

 国債募集宣伝の集会で、彼らは「生き残った私たちは英雄ではない。英雄は戦死した戦友たちだ」と語る。

  実際、戦争中は英雄扱いだった彼らは、戦争が終わるとただの人になり、2人は不遇な一生を送った。

  戦闘シーンと国債募集ツアーの模様を交互に描いているためか、内容を理解しにくいという声もある。私は原作を読んでいるので、展開が先読みできて、冷静に画面を見ることができた。

 そして、気がついたのだが、時折流れる静かな音楽が戦争の悲しみを伝えているのだと。この映画の音楽担当もクリント・イーストウッドだ。

  このような激烈な戦いを経て、平和が蘇ったはずなのに、いまだに世界から戦火は消えない。悲しいことだ。