小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

32 高校の予備校化

  全国の公立高校や私立高校で、必修科目の世界史をカリキュラムから外し、3年生の多くが履修単位不足で卒業が出来ない可能性が出てきたという問題を聞いて、効率化を追求する現代の風潮が高校の教育者の間にも蔓延しているのだと思った。

  

 理数系の大学のほとんどが世界史を受験科目に入れていない。だから、受験に関係のない授業はやる必要がないから、その時間を別の受験科目に当てようというわけだ。

 

 生徒側からもそういう要望があったのだそうだ。その結果、その高校の有名大学への合格者が増えるという図式なのだろう。これでは予備校と同じではないか。

 

 学校週5日制で、物理的に授業時間が少なくなったことが背景にあるという指摘もあるが、必須科目の世界史の授業はちゃんとやっていますと、教育委員会に虚偽の報告までして「成果」を求めたのだ。

 

 いまの高校教育が、大学受験のためにあるということが裏づけられたのだが、こうした効率追求は、日本社会で急速に浸透した「成果主義」の教育界版といえるのだと思う。

 

 それにしても、理数系の人間には世界史は不要とする高校、大学関係者は何を考えているのだろうか。歴史を知らなければ、ものの考え方が一方的になり、自分本意の生き方しかできなくなる人間が増える恐れがあるのだ。

 

 21世紀は国際化、グローバル化の時代だ。それなのに目先のことにしか頭が働かない教育者が横行する日本。行く末が心配だ。