小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1241 続・どこへ行く微笑みの国 祖国を憂いる留学生

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タイ・チェンマイに住む友人からメールが届いた。日本に留学している知人とタイの情勢についてメールを交わしたという。その内容を2人に迷惑が掛からないよう手直しし、紹介したい。 友人によると、日本に留学している人はAさんと言い、両親が公務員というタイでは恵まれた中流家庭で育った。大学卒業後、2年間日系企業で働いた後、現在、日本の地方の大学で3年間の勉強生活を続けているという。友人は「一般的に言って、タイ人から社会や政治に関する意見、将来に対する意欲を聴くことはほとんどない。チェンマイ大学の学生だった頃のAさんも同様で、当時、そういう意見、意欲がないことに物足りなさを感じていた」という。 だが、今回友人に届いたメールには赤シャツ(タクシン派)、黄シャツ(反タクシン派)、どちらの気持ちにも踏み込んで理解しているAさんの考えが正直に書かれており、友人は「日本に留学して幅広い視野を持つようになったことがよく分かる」と記し、「留学先の大学でもタイの将来に関する熱心な議論が行われているのだろう。大変頼もしいことだ」と感心した様子である。 ▼Aさんから  元気そうで、よかったです。戒厳令またはクーデターという言葉は、タイ人にとって慣れないほうがいいと思います。しかし、タイの歴史の中で初めてのことではなく、8回目になりました。軍隊はクーデターをする方法がよくわかってきていると推定できますよね。クーデターは決していい話ではないので、最後の最後の手段として、もっとやりにくくなってほしいですね。 現在、ある市民はクーデターに賛成しています。赤シャツか黄色シャツ、どちらでもない人たち、すなわち早く平和になってほしい人もいます。クーデターがあれば、タイ人同士が戦う必要がなくなるそうです(いつもどおり!)。双方のシャツの人たちは、互いに相手の言うことを全く聞かないので、真ん中(軍隊)が必要になりますね。国より自分たちのチームが勝ちたい気持ちが強すぎます。 タクシン(元首相で海外亡命中)もタイのことに関わることをやめてほしい。好き嫌いで言うのではないのですが、社会を混乱させる人だからです。農民たちにはすごい人気ですが…。黄色シャツもいろいろやりすぎます。このチームはだいたいお金や教育を持っているので、自分より下の人をもっと尊敬しなければなりません。同じタイ国市民だから。 いまのタイ社会は100%安全ではないので、自分で自分の身を守ってください。夜出ないこと、デモに参加しないこと。私は9月に帰省します。その前にこのような混乱を終わらせてほしいです。   このメールに対し、友人がどのようなメールを出したかは省くが、Aさんのメールを読んで気が付いたのは、渦中にいる人たちは視野が狭くなってしまうということだ。Aさんのようにタイから離れ、冷静になって祖国の実情をみれば、赤シャツ派、黄シャツ派の対立がいかに虚しいものかに思い至ったのだろう。 俯瞰という言葉がある。広い視野で物事を見、全体状況を把握していればどんな厳しい局面に立っても、自分の道を歩いて行くことができる。それが俯瞰なのである。これは現代の日本人にも求められる精神ではないか。