小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1154 大震災から2年半の海外での事件 カッパドキアの悲劇

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トルコの世界遺産カッパドキアで旅行中の新潟大学の女子学生2人がゼミ渓谷で男に襲われ、1人が死亡、もう1人は重傷負う事件が起きた。親日的で安全な地域といわれたカッパドキアでもこんな事件があったことに驚いた人は少なくないだろう。ちょうど1年前の昨年9月、トルコを旅し、カッパドキアにも行った。10日の旅の中でも特に印象が深い街だった。その写真を見ながら、女子学生の無念さを思い、心を痛めた。 いま、世界はグローバル化時代であり、日本から海外に出る旅行者はおびただしい。若者の一人旅、友人同士の旅も多いだろう。作家の沢木耕太郎は若き日、乗り合いバスを利用して長い海外の旅をする。それが「深夜特急」という名著になった。私も以前ラオスで夜行の乗り合いバスに乗り、長時間の旅を経験したことがある。振り返ると、忘れがたい旅の一つだった。 2人の女子大生がどんな事情でカッパドキアに行ったのかは分からない。だが、親日的で美しい景観のカッパドキアの旅を楽しんでいたに違いない。このまま旅が終われば、彼女たちにとって、思い出に残る旅になっただろう。だが、事件に遭遇してしまった。 2020年の五輪招致に成功した東京は、「確実で安全」なオリンピックを提供できる」(安倍首相のプレゼンテーション)と、強調した。たしかに、日本は外国に比べると、凶悪犯罪の発生件数の割合は低いかもしれない。だが、つい最近、花火大会帰りの三重県の中学3年生の女生徒が帰宅途中に殺害された事件起きている。安全なはずの日本でさえ、こうした事件が続発しているのだから、海外旅行では気を抜いてはいけないことは自明の理なのである。 1年前、カッパドキアで気球に乗った。カッパドキアといえば気球が名物だ。だが2009年5月、この気球が墜落し、1人が死亡し、10数人が重軽傷を負う事故があり、その後日本の旅行社は気球観光を積極的に宣伝しなくなった。それでも希望者が多く、私と妻もその仲間に入り、早朝の気球に乗ったのだった。もちろん、気球から見る景観はいまも忘れることができないほど、印象に残るものだった。 事件後、カッパドキアの町の多くの商店に日の丸の旗が掲げられ、地元の人たちが追悼行事をしたと、テレビが報じていた。犠牲になった女子学生を悼み、日本への親近感は変わらないということを行動で示したようだ。殺害されたのは東日本大震災被災地の宮城県名取市出身の学生だった。故郷の復興した姿を見ないままに、若い命を絶たれた学生は無念だっただろう。それがやりきれない。明日9月11日で大震災から2年半になる。
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