小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1077 いまも続く「北に喧嘩や訴訟」 繰り返す争いの歴史

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アルジェリアイスラム武装勢力による外国人人質事件が悲惨な結末を迎えそうだ。テレビの報道を見ていて宮沢賢治の「雨にも負けず」の詩を思い出している。中ほどから後半にかけてこんなくだりがある。「東に病気の子供あれば行って看病してやり 西に疲れた母あれば行ってその稲の束を負い 南に死にそうな人あれば行ってこわがらなくてもいいといい 北に喧嘩や訴訟があればつまらないからやめろといい…」 日本から遠いアフリカで起きた事件。賢治が生きた時代から約1世紀が過ぎたというのに、人間は争いごとをやめない。 やはり、人間は愚かな動物だと思う。弱肉強食の実態は21世紀になっても変わらない。世界をリードする米国の人々は銃で身を守り、世界の警察として力の行使を続ける。急成長の中国は、なりふり構わず、覇権主義ぶりを発揮し、黒を白と言い張る。キリスト世界とイスラム世界の宗教を背景とした対決に終わりが見えない。 日本から遠いアルジェリアで起きた日本人を含む人質事件に対し、日本政府は「人質の生命を危険にさらす行動を控えてほしい」という姿勢を表明していたが、アルジェリア軍の武装勢力に対する作戦行動が実施され、多くの人質が犠牲になった(ようだ)。菅官房長官の記者会見の様子を見ていて、隔靴掻痒の感を抱いたのは私だけではないだろう。 テレビでは、アラブ問題の専門家といわれる人たちがそれぞれの見解、解説を話している。しかし、あくまでも推測の範囲でしかない。現地では何が起きているのだろうか。 以前、スペインのアルハンブラ宮殿に行った。 長い長いキリスト教イスラム教との「宗教戦争」の末、キリスト教側のレコンキスタ(国土回復運動)によって、最後まで残っていたイスラム教のスペインのグラナダ王国が陥落した。グラナダ王国の象徴であるアルハンブラ宮殿は、王国が170年の歳月をかけて建設したものだ。美しい宮殿をめぐって、多くの人の血が流れた。その歴史は、終わりがないようにいまも繰り返されている。
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