小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1000 歴史の街を歩く 平戸と萩への旅・萩にて(2)

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長崎県平戸市から山口県萩市へと至るコースは、けっこう遠い。平戸で岡山さんらと会った私は、岡山さんの車で3セク・松浦鉄道たびら平戸口まで送ってもらい、この駅から佐世保に行き、JR九州の在来線の特急に乗り換えて博多まで1時間50分、さらに新幹線で37分の新山口で下車した。疲れていたが、この駅がかつては小郡(おごおり)といい、その名前の当時、出張でこの駅を利用したことを思い出した。 新山口駅前のホテルに泊まった翌日、ここからバスで1時間半かけて萩に着いた。この街は、明治維新の中心になった長州藩の拠点で、吉田松陰高杉晋作桂小五郎伊藤博文らを輩出した。人口減少に悩む市は、街全体を博物館としてとらえる「萩まちじゅう博物館」の取り組みを進め、観光客誘致に懸命だそうだ。この運動の中核として、箱物の萩博物館がある。
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これまで、全国のいろいろな博物館を訪問した。共通するのは入場者が少なく、どこでもが集客作戦に頭をひねっていることだ。そんな博物館にあって萩博物館は例外といえるほど、入場者でにぎわっていた。世界各国の海や山に住む危険な生物のはく製や資料を集めて「最恐!危険生物アドベンチャー~海と山のアブナイ生きものたち~」という企画展を開催したら、入場者が次々にやってきてオープン36日の8月11日で3万人を突破したのだ。この調子だと最終日の9月9日までは、企画展としては過去最高の7万人を超えるのは確実だと、学芸員の堀成夫さんが話してくれた。 1990年に発見されたという実在した伝説の毒鳥、世界最大の最強のトカゲ・コモドドラゴン、アフリカ最強の殺人魚・ムベンガ、人の体にもぐり込むアマゾンの最恐の怪魚、恐怖の伝説を生んだ世界一の猛毒動物、世界最大のサソリ・ダイオウサソリなど、怖いものが次々に登場するのだから、入場者は暑さを忘れて、展示物に見入っていた。常設展示には萩の歴史を飾る明治維新の人物群像がある半面で、このようなアイデアあふれる展示が集客の原動力になったようだ。
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萩は、静かで落ち着いた街である。明治維新をめぐって萩と会津(現在は会津若松市)は敵対し、会津は朝敵となり長い間苦汁をなめる。2つの街は、現在も微妙な関係にあるそうだ。特に会津側の拒絶反応が激しい。戊辰戦争終結して143年になるが、負けた側の怨念が残っているのだから、尖閣竹島という領土問題がニュースになっている中国、韓国の関係改善は容易ではないなと理解する。韓国大統領の竹島上陸、香港活動家の尖閣上陸。2つの事象は日本国民から見れば、常軌を逸した行動だ。ロシアが実効支配を続ける北方領土問題を含めて、実は人間は理性だけでは通用しない「アブナイ生物」の典型なのかもしれないと思う。
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ところで、会津若松はいま、原発事故の風評被害で観光客が激減し、2011年に同市を訪れた観光客は前年比43万人減の235万人だった。このブログでも書いたように、修学旅行を取りやめた学校が続出した。一方、萩には同年は会津と匹敵する約228万人が訪れている。世界遺産の姫路城がある兵庫県姫路市900万人、松本城がある長野県松本市の550万人には程遠いにしても、城下町としての静かなたたずまいは萩も会津も魅力がある。そして、萩には海もあって、海岸がまた美しい。いつか、再訪したい街の一つである。
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写真 1、萩博物館前の静かな道 2、萩博物館 3、石垣のが残る萩城跡、4、萩の海岸 5、萩の落ち着いた街並み