小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

834 hanaとノンちゃんの対話 暑い夏来る

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わが家にたまにミニチュアダックスフンドが飼い主たちとともに遊びに来る。名前は通称、ノンちゃん。数カ月わが家で暮らしたこともあって、わが家のゴールデンレトリーバー・hanaとも仲がいい。しかし、このところの猛烈な暑さで2匹ともぐったりとしている。

散歩のときには、ぴょんぴょん跳ねるノンちゃんが特に元気がない。そんな2匹に言葉があったら、どんな話をしているのだろうか。あるいは、こんなことかもしれない。以下は私が想像する2匹の雌犬の対話。(hanaはH、ノンちゃんはNで表記)

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H ノンちゃん、元気がないね。この暑さじゃ、仕方がないね。でも私よりの若いあなたの方が参っているなんて・・・

N ええ。hanaさん。急に暑くなって、私、体がだるくて、だるくて。どうしたらいいの。

H そうね。私もあと少しで9歳になるけれど、毎年、夏のつらさは増しているの。もともと、私はあまり水を飲まないので、余計につらくて・・・。その分、お父さんは散歩の時間を短くしてくれたので、少しは楽だけど。

N 私、本当はhanaさんと散歩するのが大好きなの。池の周りにくるとhanaさんの家のお父さんがリードを外してくれて自由に歩き回ることできるので、楽しいの。でも、それよりも、暑くて、たまんないなあ。

H お父さんがぶつぶつ言っているのを覚えているよ。地球の温暖化が進んでいて、日本の気候がかなり変わっているんだって。それに、ことしは日本では大変なことがあって、電気が心配なんだそうよ。

N 分かった。私の家のママと赤ちゃんがこの家で寝ないままで私たちと一晩送ったあの日のことに関係しているんでしょう。

H ノンちゃん、すごい。その通り。私、あの日のことは忘れることができないの。すごい地震だったよね。ノンちゃんも私もガタガタ震えたよね。家の中にいて、あんなに揺れたのは初めてだった。私、雷が大嫌いで、震えるの。でも、地震これまでは大丈夫だったの。でも、あの地震は怖かった。ノンちゃんも震えていたね。

N はい。あれから、何だか人間は不機嫌な顔をしているね。

H そうなの。これもお父さんの独り言なのだけど、地震のあと、大きな津波があって東北地方ではひどい被害が出たそうなの。それに福島というきれいな県にある原子力発電所が事故を起こして、放射能というとても危険な物質が外に漏れて大騒ぎになっているそうよ。まだこの発電所の事故は完全に解決していないので、おおぜいの福島の人たちが遠くに避難しているそうよ。電気も足りないって、大騒ぎをしているね。

N そうだったの。それで、私の飼い主は暑くてもエアコンを使わないで我慢していたんだ。

H きょう、お父さんがすだれを取りつけていたね。あれで少しは涼しくなるのかな。ほら、そこにゴーヤがあるでしょ。けっこうツルが伸びて日差しを遮ることができるらしいよ。

N ふーん。人間って、不思議な動物だね。すごく頭がいいと思っていたけど、案外そうでもないこともあるんだ。

H そうね。いろんなものを発明して便利な世の中になっているのに、途中でけんかをしたり事故が起きたりで、便利な世の中だったはずなのに、自分たちが発明したものに振り回されているのだから本当に不思議な動物だと思うよ。

それよりもノンちゃん、どうしたらこの暑さを乗り越えることができるか、考えようよ。このうちの玄関は涼しいよ。うちにきたら、ここで過ごそうよ・・・。それにしても、お腹がすいたなあ・・・。ノンちゃんはどう?

N うーん。気持ちが悪くて、食べたくないなあ・・・

H よーし。今夜のノンちゃんの分は、この私が食べてあげるよ。

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2匹が対話をしているころ、庭では紫陽花と百合の花が美しさを競っている。この季節を代表する草花であり、眺めていると、大震災で落ち込んでいた心が次第になごんでくるのを感じる。花も動物も人間の営みには欠かせない、伴侶のようなものなのだと思う。