小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

722 スポーツ選手の栄光と挫折と 10月の季節の中で

シーズンが始まったばかりのフィギュアスケートのNHK杯で浅田真央が惨敗した。過去の栄光を考えると、8位という成績は彼女にとって惨敗といっていい。ショート、フリーともジャンプの失敗が続き、生彩を欠いた演技に目を覆いたくなった。天才と思われていた浅田に何があったのか。浅田の寂しい表情を見ながらスポーツとは残酷なものだと思った。

浅田はことしになって、コーチをロシア人のタチアナ・タラソワさんから、かつての男子の全日本チャンピオンである佐藤信夫氏に代えた。その前にはジャンプを長久保裕コーチに指導を受けた。週刊誌によって「浅田のこれまでのジャンプはひどすぎる」というコーチの声が伝えられた。だから、ジャンプに力を入れて練習をしてきたのだと思う。

しかし、結果はついてこなかった。悉くジャンプは失敗する。それによって全体の演技も委縮してしまった。いまの浅田の状態を指して「挫折」と表現するのは早計だろう。シーズンが深まるにつれて、苦手なジャンプを克服して精気あふれる演技を見せてくれるはずだと信じたい。

10月はスポーツの季節だ。プロ野球も、サッカーもゴルフも終盤に入っている。千葉市袖ヶ浦カンツリークラブで開催された男子のブリヂストンオープンを見た。この夏の酷暑が信じられないほど、寒い一日だった。曇り空に吸収されてボールは途中から消えてしまう。

この大会で活躍していた尾崎将司の姿はきょうはなかった。日本のゴルフ界でツアー94勝は断トツの成績だ。だが、今季はこれまでの賞金は73万9200円だけだ。63歳なのだから無理もない。

大きな借財をつくり、さらに腰を含めて満身創痍の尾崎には、過去の栄光は遠いものになった。大会は尾崎に似たタイプの池田勇太が昨年に続いて優勝した。それは確実に世代交代を告げていることの証明だろう。

プロ野球パリーグペナントレース3位のロッテがクライマックスを勝ち抜いた。一方セリーグは、中日が順当に日本シリーズに進んだ。ロッテの西村監督と中日の落合監督は雰囲気が全く違う。どちらかといえば西村さんを応援したくなる。意固地な雰囲気の落合さんより西村さんはひたむきな感じがするのだ。

私の勘ではロッテが勝つと思う。切れ目もない打線は中日より一枚上だ。ロッテが日本一になったら、野球評論家の一部はいまのクライマックスシリーズという在り方を批判するかもしれない。だが、クライマックスは間違いなく面白い。それはシーズンの集大成ともいえる戦いだからだ。