小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

712 「ローマへの道」紀行(3) 大雨のプリトヴィッツェ湖畔散策

画像 スロベニアからクロアチアに入り、オパティアという町のホテルで未明に激しい雷鳴を聞いた。ここから1時間半かけて向かった円形闘技場があるプーラあたりから天気があやしかった。 女性ガイドは案内が終わると、さっさと帰って行った。大雨で家が大変な目に遭ったというのである。 それを実感したのは、次の町へと移動するバスの車窓から浸水した家を見たからだ。道沿いの家や畑が軒並み浸水している光景は初めてだ。いやな予感がした。翌日には一番楽しみにしている世界遺産・プリトヴィッツェ湖の遊歩道散策を控えていたからだ。画像 この予感は当たってしまった。ここはクロアチアの国立公園で、1979年に世界遺産に登録された滝で結ばれる階段状に並んだ16の湖が美しい。バスを降りると激しい雨だ。雨用に用意したビニールの上着を着込み、傘をさして湖岸へと遊歩道を歩いて行く。
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雨は次第に靴を濡らし、体を冷やす。1時間ほど歩くと靴の中に水が入り込んで、川の中を歩いているような錯覚さえ抱く。 確かに景観はすばらしい。だが、まとわりつく雨には閉口し、最悪の世界遺産との巡り会いになったと思った。晴れていればエメラルドグリーンの湖がまぶしいはずだ。遊歩道を歩き、湖の遊覧船と電気(エコロジー)バスにも乗った。 私たちに比べると、遊歩道で出会うハイカーたちは完全防備に近い服装をしている。彼らからすれば、傘をさしながらこんな山道を歩く日本人は奇異に映ったに違いない。
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旧ユーゴの内戦で、この湖畔とアドリア海に接するドブロブニクは危機にさらされている世界遺産を指定する「危機遺産」に登録された。双方とも内戦が終わって平和を回復すると、危機遺産から抹消され、多くの観光客を集めるクロアチアの代表的名所になった。中でもプリトヴィッツェ湖はクロアチアの自然の代表格であり、日本の国立公園とも共通する優しさと豪快さを併せ持った再訪したい地域である。