小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

606 線路の両側に咲き乱れる菜の花 いすみ鉄道を目指して

画像 菜の花畑に 入り日薄れ 見渡す山の端 霞深し 春風そよふく 空を見れば 夕月かかりて 匂い淡し       (朧月夜・高野辰之作詞、岡野貞一作曲) 房総半島に菜の花を見に出かけた。新聞には「菜の花のじゅうたんに走る いすみ鉄道」という見出しでいすみ鉄道のレールのわきに菜の花が咲き、1両編成の黄色い外観をした列車が走ってくる写真が掲載されていた。 記事には、城見ケ丘や上総中野駅周辺が特に菜の花が多いと書いてある。 急に暖かくなって近所の街路樹のハクモクレンの花が咲き始めた。その暖かさに誘われ、新聞に出ていた2つの駅を目指してカーナビをセットする。指示通り走ると間違いなく、城見ケ丘駅に到着した。駅の周辺は、レールを挟んで数百メートルにわたって菜の花が咲いている。 宇都宮ナンバーの車に乗ったカップルもおり、カメラを構えた人も目に付く。しばらく待っていると1両編成の列車がやってきた。立って外を見ている人が多い。菜の花見物の人たちなのだろる。 「朧月夜」を作詞した高野辰之は、長野県永田村(豊田村から現在は中野市に)の生まれだ。この村は、房総と同じように、春になると菜の花が一面に咲き乱れる村だったという。菜の花畑は、日本のどこにでもある「原風景」といっていいい。画像 房総半島の一部を走るいすみ鉄道は、大原 と上総中野間26・8㌔を結ぶが、沿線自治体などが出資した第3セクター方式の鉄道だ。赤字が続き、社長を公募制にしたり、オリジナル商品を販売したりと生き残りのために、いろいろなことをやっている。先日も訓練費700万円を採用時に自己負担すれば、列車の運転免許を取得できるという仰天するような運転士養成プランを発表した。 運転士になりたければ、700万円を出してくださいというのだ。同社のホームページには「いすみ鉄道で少年時代の夢を叶えませんか! 自社養成列車乗務員訓練生を募集」という案内が出ており、「広く一般の社会人から自社養成乗務員訓練生を募集します。社会経験を積んだ皆さまが列車乗務員になるまたとないチャンスです。この機会にご自身の夢をいすみ鉄道でかなえてみませんか!(この募集は、訓練費を自己負担していただく列車乗務員訓練生で、全国初の試みです)」と説明している。 既に東京で1回目の有料説明会(弁当を食べながら、社長らと話をするようだ)が終わり、4月に再び開催する予定だという。 すごい発想だ。いまの日本は経済事情が悪く、就職率も悪化の一途をたどっている。そんな時代だが、「夢」をかなえるために大金を払う人もいるかもしれないと、いすみ鉄道のだれかが考えたのだろう。一笑に付すことは簡単だが、この話はメディアに取り上げられ結構反響を呼んだので、宣伝効果はかなりあっただろう。そして、菜の花の季節になり、花を求めて利用者も増えている。(一枚目の写真はごきげんなhana、2枚目は城見ケ丘付近で)