小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

560 石川遼の未来 モチベーションとの闘い

石川遼が18歳という史上一番の若さで男子ゴルフの賞金王になり、最優秀選手賞も獲得した。ことしの賞金総額は何と1億8万円という、同世代の若者だけでなく、多くの大人がため息をつくような夢の金額だ。

これだけの若さで、多くの先輩がなし得なかったことをやってしまった石川は、まさしく天才なのだろうが、この先がやや心配だ。

彼の受け答えは、18歳とは思えないほどしっかりしている。それはゴルフのプレーにも比例しているのかもしれない。高校という一番大事なときに、学業をほぼ投げ捨ててゴルフに励む姿はさわやかさを通り越して、私には悲壮に見えた。

この1年、石川はゴルフに集中した。その結果は、多くの先輩を通り越して賞金王という成績に結びついた。

石川は「ゴルフが好きな思いは今までで一番なので、来年は今年以上の努力をしたい」と話した。その気持ちはいい。問題は周囲の大人たちだ。あまりにも若くして頂点に立ってしまったゆえに周囲はこれまで以上に気を遣い、メディアは彼の一挙手一投足に注目するだろう。

緊張から逃れられる時間は少なくなり、ストレスもたまるに違いない。

それ以上に怖いのは、若くして目標を達成してしまい、それ以上の目標があるかということだ。石川は将来、アメリカツアー参戦を考えているらしいので、まだ大丈夫だとは思うが、実はこれが一番の心配だ。

燃え尽き症候群」という言葉がある。懸命に目標に向かって進んだ人が、そこに至ったあと脱力状態となり、立ち上がることができないという意味だ。

サラリーマン社会ではこの言葉に当てはまる人は少なくない。脱力状態というより、セミの抜け殻のように、二度と立ち直ることはできない人を日本社会は数多く出してきた。

英語の「モチベーション」という言葉は「動機づけ」の意味だが、現代の日本語では、目標に向かって何かをやることを意味している。多くのスポーツ選手が多用する言葉である。

さて、石川の来年以降のモチベーションは何か。20歳を過ぎたころには、それをきちんと考える必要性に迫られるかもしれない。それは、石川だけなく、少年少女から大人になっただれもが通過しなければならない関門なのだ。