小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

418 そばを食べる話 寒い週末のひと時

「暑さ寒さも彼岸まで」という。夏の暑さは秋の彼岸まで、冬の寒さは春の彼岸ごろまでにそれぞれ暑さ、寒さがやわらぎ、しのぎやすい季節になるという、自然の移ろいを表現した昔からの言葉である。

そんな言葉があるのだが、このところ最高気温が低い日が続き、まるで寒に戻ったようだ。せっかく開きかけた桜の花もこの先どうしようか迷っているように見える。

だが、季節は確実に春へと移行している。近所にある調整池の一角にある雑木林は新芽が目に付くようになった。遊歩道のけやきの芽も出始めた。そんな土曜日に友人たちと昼、そばを食べる会と称して地元のそば屋に行った。

最近、そば屋は競争が激しいのでそばのメニューを増やしている。私たちが行った店もそうで、工夫をこらした「4種そば」というメニューもあり、これに天ぷらを頼む。友人たちと会話を交わしながら、のんびりそばを食べる。時間がゆったりと流れる。

山菜の天ぷらもあった。コゴミやタラの芽が入っている。店の女性に聞くと、タラの芽はまだ小さいという。まだというのは当然だ。近郊の農家が温室でタラの芽やコゴミを栽培しているのだが春の彼岸が過ぎたとはいえまだ十分育っていない。それでもそば屋の需要があるので、出荷しているようだ。

この寒さは貸し農園の作物にも影響している。私の畑の近くで、この季節にスイカを植えた人がいる。私はこんな早くにと驚いた。この人はスイカの苗をビニールで覆って寒さ対策をして、6月には収穫する予定だった。しかしこのところの低温で、順調に育っていたはずのスイカがしおれてしまった。結局、新しい苗を植え替え、寒さ対策として二重の覆いを施し「今度は大丈夫」と彼は言う。スイカは真夏の食べ物だが、それより早い時期に早く収穫するにはこうした苦労があるのだ。

この寒さでも、土曜日から始まった高速道路のETC搭載車「千円料金」制で、多くの高速道路が車で埋まった。駅前のレンタカー店では、全車がETC付きとあって朝から車を借りる人でにぎわっていた。

私は車を借りてまで遠出をしようとは思わない。この政策は景気浮揚を優先しており、温暖化防止という観点からは全く議論がされていない。千円料金と同じ時間帯に、温暖化対策の世界会議(作業部会)が開かれているニュースを見た。日本は温暖化対策に熱心である姿勢を見せたいと外務省担当者が話していた。そうだろうかと反論したくなった。