小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

375 この世はすべてよし ブラウニングからの贈り物

2008年の大みそかだ。イギリスの詩人、ロバート・ブラウニング(1812―1889)の詩を多くの人に贈ろうと思う。それは「神は天にあり、この世はすべてよし」である。モンゴメリの「赤毛のアン」のラストに引用されていることでも知られ「ピッパが通る」という劇詩の最後の2行がこの言葉なのだ。

 「この世の中はすべて神の摂理で動いており、誠実に生きれば、道は必ず開ける」と解釈することができるという。

 日本では上田敏が「春の朝(あした)」という詩に訳して、教科書にも出ている。

 (上田敏の訳詩「春の朝」)

時は春、

日は朝(あした、

朝は七時、

片岡に露みちて、

揚雲雀(あげひばり)なのりいで、

蝸牛(かたつむり)枝に這(は)ひ、

神、そらに知ろしめす。

すべて世は事も無し。

ブラウニングは、人間を信頼し、楽観的だったという。こういう暗い世相にあってブラウニングの精神をだれもが持ちたいと思う。時代は巡るという。「悲しみ、苦しみ、悩み」を乗り超え「楽しみ、慈しむ」心を持ちたい。

 

日比谷公園では、家を失った人たちのためにNPOが炊き出しをやり、テントをつくった。そこには多くの人々、企業から差し入れがあった。暖かい食べ物を受け取った男性は涙を流し「来年のいまごろは、立ち直って恩返しをしたい」と話していた。そんな年の暮れではある。