小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

370 正統派こそ 「変」に対抗する若者へ

ことしの世相を反映した漢字は「変」だそうだ。変な世の中を指しているのか、明るい社会に変わってほしいという希望を込めた意味なのか。人それぞれに受け止め方が異なるかもしれない。

こういう時代にあってこそ、真っ直ぐに生きる姿勢を持ちたいと思う。たまたまテレビで2人の天才を見て、それを痛感した。

 

言うまでもなく、ゴルフの石川遼とフィギアスケートの浅田真央だ。石川は17歳、浅田は18歳。浅田は13日に韓国で行われたグランプリファイナルで、キム・ヨナを破って逆転優勝した。世界選手権でも優勝しているので、文字通り世界一の選手である。

 

石川は高校生ながら、プロで獲得賞金1億円を突破し、国内ではトップクラスのゴルファーに成長し、13日の3ツアーズ選手権でもMVPに選ばれた。2人に共通するのは、奇をてらわないで挑戦する姿勢だ。失敗を恐れないと言い換えてもいいかもしれない。若さゆえの伸びやかさを伴うので、それが大変な魅力になっている。

 

現実に戻り、日常を点検すると、政治、経済ともどこへ行くのかよく分からない。「変」なのだ。リーマンショックに端を発した世界金融危機は、日本の多くの企業に深刻な打撃を与え始めた。トヨタもホンダもソニーもキャノンもと、数え出したらきりがないほど、多くの企業がリストラに踏み切った。

 

それに対して、政治は無力だ。対策は後手にまわっている。世界金融危機の原因をつくったアメリカは、3大自動車メーカー救済の法案が否決されてしまい、これもどこへ行くのかよく分からない。先進国がこのような危険な状態になっては、途上国も危ういはずだ。

 

こうした世界同時不況をつくり出したのは、仕事に汗を流さず「金こそすべて」という米国主導の行き過ぎた拝金主義が破綻したと言っていい。

ことしの干支は一番目の「子」だ。ネズミはちゃっかり者という話がある。昔、神様が正月に私のところにやってきた順で大将にするという。この話を聞き忘れたネコがネズミに確認すると、ネズミはわざと1日遅れた日を教え、ネコはこの競争に参加できない。一方、まじめな牛は一番早く出発して神様のところに行こうとするが、ネズミは牛の背中に乗り、神様のところに来ると牛から飛び降りて、ちゃっかり一番になってしまった。だから干支にはネコ年はないというのだ。(俗説らしい)

 

2009年は丑年だ。牛はふだん優しいが、怒らせたら怖い。ネズミが変幻自在の「変」な動物なのに対し、牛は歩くことが遅くても真っ直ぐ進むのが好きな正統派の動物だ。牛とネズミは天敵のはずだ。その意味でも丑年は、子年を覆った暗い世相を払拭してくれる何かがあるはずだと信じたい。