小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

309 8月(1)  ムクゲの季節に

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ムクゲの花が遊歩道に咲いている。いまが盛りである。炎暑の夏はムクゲの白い花がよく似合う。この花は中国やインドが原産国だが、韓国の国花でもある。 根源詩人といわれた高橋新吉(1901-1987)が書いた「木槿の花」の詩を読み返す。 むくげの花の白さは何であろう 雪よりも白い花びらを 暑い夏の日盛りにひろげている 遠い雲のような白さ この白は、遠い過去を思い出させる哀しみの色でもある。63年前の終戦の夏にも、この花は咲いていたはずだ。じりじりと太陽が照りつけても、新しい花をつける強さを持っている。この花に生きる勇気をもらった人々も少なくはないだろう。 8月だ。旧暦の8月を葉月(はづき)と呼んだが、いまでは8月の別名としてカレンダーにも書いてある。「木の葉が紅葉して落ちる月」から「葉落ち月」「葉月」といわれるようになったと辞書に出ている。葉が落ちるにはまだ早いが、8月の声を聞くと次に秋がくるのだと、なぜか元気が出る。 知人が新しい人生を歩むことになった。8月生まれらしく、行動的な性格で自分の生き方を貫いてきた。自然とのかかわりを基本に生活をするのだという。彼らしい生き方だと思う。一夕、思い出話に時間を送った。 極地(南極、北極)体験や伊豆大島三原山の噴火、日航機の御巣鷹山墜落事故といった現場取材が忘れることができないと語る元青年は、最近伸ばし始めたひげに白いものが目立つ。そのひげを見ていて、彼の波乱の人生を思った。 8月に生まれた友人はほかにもいる。曇りのない目をしている友人は、ことしになって仕事を替え、自分の生き方を模索している。炎暑の中にいても一服の清涼剤のような爽やかさを持っていて、ムクゲの白い花を連想するのだ。 けさも、犬のhanaとムクゲの花が咲く遊歩道を散歩した。空には白い雲が流れ、友人たちの顔が時折浮かんでくる。それぞれの未来に幸多かれと願いながら歩き続けた。
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ムクゲの花は白だけではない。紫や外側が白で内側が赤いものもある)