小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

134 社保庁の賞与返納 これで怒りをかわせるか

年金記録漏れの責任をとって、社会保険庁の全職員1万7000人に6月の賞与(ボーナス)の一部を自主返納させるという。安倍首相、塩崎官房長官柳沢厚労相、村瀬社保庁長官らも含まれ、総額は10億円規模になるそうだ。肩身の狭い毎日を送っている社保庁職員らの反応が知りたいところだ。

早くも民主党などからは「参院選向けのパフォーマンスだ」という批判が出ているが、これで国民の怒りをかわせると思ったら、大きな間違いである。

しかし、社会保険庁はなぜこのようなたるんだ組織化してしまったのだろうか。村瀬長官は民間から起用されたが、それまでの長官は歴代厚生官僚が務めていた。

官僚のトップはその役所の事務次官だ。厚生省(現在の厚生労働省)の場合、事務次官の次が社会保険庁長官だ。莫大な保険料を集める社会保険庁のトップとしての責任は重い。しかし「放漫経営」を歴代の長官は繰り返したのだ。

その結果、年金に対する国民の不信感を募らせたあげく、今回の記録漏れの騒ぎを引き起こしたのである。彼らは、社保庁長官を退官後華麗なる天下りを繰り返し、優雅な人生を送っている。責任を全うしたなら何ら後ろ指を差されることはないが、そうでないから、「晩節を汚す」状態に陥っているのだろう。

今回の返納について説明した村瀬長官は、歴代社保庁長官らOBにも現役並みの「寄付」を求めると述べている。該当するOBたちは「安倍首相や村瀬長官め、余計なことをして」と怒っているに違いない。

しかし、彼らの罪は重い。現役並みではなく、それ以上の返納だって考えていいではないか。そうしなければ、国民の怒りは消えないのではないか。

知り合いの米国人に、このニュースの反応を聞いた。

「いくら返納?10億円。年金記録未納は5000万件でしょう。これにかかるお金は何千億円でしょう。これは国民の怒りをそらそうとするポーズでしょうね。お金をドロボーしたけれど、少し返したから許してもらえるだろうということなのかな。そんなことはだめだよね。どう見ても変だよ」

理解に苦しむという表情をしながら、彼はこう話していた。