小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

108 私が住んだ街4・東京都港区三田 泉岳寺近くにて

東京の港区には、いろいろな史跡がある。その一つが三田にある泉岳寺だ。都営地下鉄泉岳寺駅を降りて、しばらく歩くと、忠臣蔵で知られる泉岳寺がある。

そこからNHK交響楽団の事務所を通り、坂を上った所に一時住んだ。

住みにくい場所だった。物価は高いし、空気も悪い。それは当然だ。坂の下には、国道1号が走っている。近所は、昔ながらの人々か、生活にゆとりのある人がほとんどと思われた。

しかも、悪いことに勤務地まで近い。すると、何か大きな事件が起きると必ず呼び出される「呼び出し要員第1号」として登録をされていた。

酒を飲んで酔っていても深夜に電話はかかってくる。早朝からも起こされる。心が落ち着くことのない暮らしが続いた。それが三田だった。

最近、何年かぶりで周辺を歩いた。あまり変化はないことに気がついた。大きなビルはたしかに増えたが、住宅街に一歩入ると、けっこう以前のままの家も残っている。

都心部でありながら、垢抜けしない街並みが広がっている。見上げると、東京タワーが目の前にあるというのに。というと、失礼か。でもそういう印象を受けた。

たぶん、以前に比べるとこのあたりの空気もきれいになっているはずだろう。だが、夏の暑さはさらにひどくなっている。そんな街に住む人は、何を思いながら生活をしているのだろうと思う。

人間の生き方は、便利さだけではないと、この街で暮らして気がついた。(07.4.9)