小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

93 トイレの話 雪華の朝に

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雪が降らないままに冬が終わるかという暖冬が続いた。それがこのところのゆり戻しだ。寒さがぶり返し、あすは春の彼岸の入りというのに、きょうは雪の華が舞った。

朝、いつものように犬の散歩に出る。ふだんはいやいやといった感じのわが家の「お嬢犬」は、なぜかきょうは様子が違う。

早く散歩に連れて行けと、体をすり寄せてくる。さらに前足を私のひざに乗せてくる。何かをせがむときに発するうなり声まで出したのだ。

散歩をしていて、気がついた。こいつは雪が好きなのだと。雪が降ると、転げまわるように走りだす。それが犬たちの習性のようでもある。彼女は、雪が降ることを文字通り、動物のアンテナで感じ取ったのだろう。

だから、散歩コースでははしゃいでいる。ほかに人影(犬影か)がいないのを見計らって、リードを外してやる。それが間違いのもとだった。

いきなり駆け出し、おーいと呼び、口笛を吹いても戻ってこない。好き勝手に走り回る。

追いついて、リードを掛けようとすると、さっと逃げる。まるで私を馬鹿にしているようだ。腹を立てて、急ぎ足で歩く。普段ならすぐに追いかけてきて体をすり寄せる。

いくら歩いていっても近付いてこない。いつしか一ヵ所に鼻をつけたまま何かをしている。しばらくして、ようやく彼女はやってきた。首の下には、汚物が付着している。以前にもやった行動だ。

飼い主が持ち帰らなかった汚物に顔を寄せ、それが首についてしまったのである。このにおいは強烈で、容易に取れない。家族が30分近い時間をかけて、風呂場でシャンプーした。

犬はほとんど決まった場所に排泄する。中にはそれが分かっていても、そのまま放置して素知らぬ顔で去っていく不心得の飼い主がいるから、けさのような大騒ぎになる。

犬はかなり高い確率で野外で排泄するが、屋内で飼われている犬の排泄時間の間隔は長い。人間で言うとヨーロッパ人と匹敵するのではないか。

昨年3月、ツアーでヨーロッパ旅行をした。この時、感じたのはトイレ事情の悪さだった。どこもきれいではない。しかも数が少ない。

ツアーでは決まってトイレ休憩があった。日本人が行列を作る。あまりの汚れのひどさに小用をせずに我慢して戻ってくる女性も少なくなかった。ヨーロッパでは、トイレはそう重要な位置づけがされていないのだろうと思ったものだ。

ガイドの説明では、ヨーロッパの人は朝自宅で排泄をした後、昼の休憩まではトイレには行かなくとも持つのだそうだ。日本人に比較して膀胱が大きいのだろう。犬族も同じなのかもしれない。うらやましいことではある。