小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

41 マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと

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  犬は、飼い主に対し強い愛情と忠誠心をもつといわれる。それが本当がどうかは、一度犬を飼った経験がある人にはわかるはずだ。この本(早川書房刊)は世界一おバカというほど、やんちゃで圧倒的なエネルギーを持つアメリカ・ラブラドールの「マーリー」(雄)と13年間暮らした思い出をつづったエッセーである。 著者のジョン・グローガンは、フィラデルフィア・インクワイアラーという新聞社のコラムニストである。まだ読んでいない人のために、詳しい内容の紹介は割愛させていただくが、全米で200万部を突破したベストセラーといえば、面白度がどの程度か見当はつくだろう。 ペットと飼い主の関係は多種多様だが、この本の一家はマーリーを家族の一員として扱い、その関係は濃密だ。そして、マーリーが年老い、最後の別れの場面では、涙が止まらなかった。(どのような場面かは、想像してください) 「ペットロス」という言葉がある。家族の一員として、暮らしてきたペットが死んで、その飼い主が放心状態になってしまうことだそうだ。ジョン夫妻も同様の状態となり、マーリーが死んでからも、折にふれて彼を思い出すのである。 いま、パソコンに向かっている私の机のすぐ近くには、わが家の一員の「hana」がいびきをかいてゆったりとした昼寝の時間を楽しんでいる。彼女はけさの散歩で、私の隙を狙って、リードをしたまま逃げ出し、公園中を駆け回り、その辺にあった糞に顔を突っ込んで私に叱責された。 悪いと思ったのか、きょうは家の中で私の後を追っているばかりいる。1階から2階に上がればすぐついてくるし、1階に降りればまたどたどたをついてくるのである。それは無償の愛なのである。 この本の著者は、マーリー亡き後、彼に似た犬を飼ったが、「マーリーの後ではどんな犬でも物足りない」といっている。飼い主をてこずらせたマーリーは、実はおバカ犬ではなく、ジョン一家には名犬だったのだと思う。