小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

08 奇跡の図書館

福島県の矢祭町という名を聞いたことがあるだろうか。福島県茨城県の県境に位置した人口6985人(9月1日現在)の小さな町である。

この小さな町が一人の町長によって、全国的に知られる町になったのである。住基ネット反対、合併しない町宣言などで、独自の町政を歩んでいるからだ。

町長は根本良一。家業の家具店を営んでいたが、1983年4月、矢祭町長に初当選。連続6期町長を務めている。

5期で引退するはずだったが、町民が町長室に押しかけてやめるなと町長室を占拠、根本は6期をやることになったいきさつも新聞で大きく報道された。

その矢祭町がまた話題になっているのだ。山村ゆえにこの町には図書館がなかった。町民の強い要望に応えて根本は図書館つくりを認める。

ここで根本の真骨頂が発揮された。図書館の予算はない。そこで一般からの寄贈を蔵書にする計画とし、建物は古くなって利用されていなかった武道館を当てることにした。

そして、肝心の本はどうか。インターネットや新聞でこのユニークな図書館づくりが紹介されると、全国から次々に寄贈が相次いでいるのだ。

宅配便、トラックを使っても、町は一切送料は負担しない。送り主負担にもかかわらず、9月20日現在で193,630冊が寄贈されたのである。

膨大な寄贈本の整理をするのはボランティアたちである。目的意識をもっているだけに本の山との格闘も楽しいだろうと推測する。

これはまさしく、現代の奇跡の一つであろう。矢祭町の図書館は来年4月にオープンする。一度訪ねてみたい図書館になること請け合いだ。