小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

395 hanaのつぶやき 2月・夏日の庭で

  夕べの嵐で、私は寝不足です。ものすごい風が雨戸を鳴らすし、湿気が高くて体が火照ってたまりませんでした。そして、きょうの暑さです。普通、2月の14日といえば、一年で一番寒いころだといわれています。

  も、お父さんが家族に話しているのを聞いたところでは、2月の観測史上最高で静岡市で26・8度になり、神奈川や千葉でも25度以上の「夏日」になったのだそうです。昼過ぎ、私が部屋の中ではあはあと息をしているのを見たお父さんが庭に連れ出してくれましたが、外も日差しが強くて、のどが渇きました。

  ことしになって、私は留守番の寂しさを何度か味わいました。普段はママが家にいてくれるので、のんびりできるのですが、1月と今月に入って2回、ママが長めの旅行をしたので、昼間は私だけが家に残されたのです。私は寝るのが好きなので、だれかが家にいるときは安心して眠りに就きます。でもだれもいないと、落ち着くことができず、浅い眠りしかできないのです。依存心が強いのかもしれませんが、それが性格なので仕方がありません。ママだけでなくお父さんも時々旅行をするようで、余計に寂しくなってしまうのです。

  は6歳半になりました。人間で言えば40数歳というところでしょうか。一生の半分程度を生きたことになります。最近お父さんは家族に「hanaは何でも言葉が分かるみたいだな」と話していました。そして、朝の散歩の時にはけっこう難しいことを話しかけます。けさもこんなことを言っていました。

 「おい、hana。最近の世の中はちょっとギスギスしすぎているぞ。きのうの朝、山手線から降りている時のことだ。大きなかばんを持った若い男が、近くにいた私を思い切り押して、ホームから階段を駆け降りたのだよ。その男は電車の中でも私にかばんをぶっつけ、こちらがよけようとして男のかばんを少しだけ押してしまったのだ。それが気にいらずに、電車を降りてからわざともう一度押してきたようだ」

 「あの若者は、職場でどんな仕事をしているのかと、つい考えてしまったよ。電車のマナーといえば、最近満員電車の中で立ちながら本を読む人が目立つようになった。読書家なのだろうが、窮屈な電車の中で他人の迷惑を考えず自分の世界に入る神経が理解できないのだよ。携帯もそうだがね」

  こんなことを家族に話すと「すぐに顔に出すから、相手に嫌がらせを受けるんだよ」と反撃されるので、お父さんは私に打ち明けるのだと思います。私は争うことが嫌いなので、人間の世界には「ギスギスする」などという言葉が何であるのかなあと考えるのです。犬の中には闘うために生まれてきた種類もいますが、私は闘うよりも大好きな人間と仲良くするのが一番幸福です。ですから、寂しい時やうれしくてしようがない時くらいしか吼えないようにしているのです。

  きょう、庭でパンジーの花を見ながらのんびりしていたら、急にお父さんの姿が見えなくなりました。どこかに出かけてしまうのかと思い、寂しくなって何度か吼えてみました。すると、家の中からお父さんが庭に出てきて、私の頭を何度かなでてくれながら「お前は本当に寂しがりやだな」と言って笑っていました。休日なのに、留守番をするのは嫌だと思ったのですが、それからお父さんがドライブに連れて行ってくれたので、暑くても大満足の一日になりました。