小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

209 アイ・アム・レジェンド 疑問多いSF映画

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 東京駅近くの国際フォーラム広場のあちこちに「地球上に人間は一人だけになった」と大書された映画のポスターが掲示されている。いま上映中のウィル・スミス主演の「アイ・アム・レジェンド」の宣伝ポスターだ。 ウィル・スミスはいまさら言うまでもなく、実力、人気とも米国で上位にランクされる俳優だろう。

 ことしはアメリカンドリームを体現した男を描いた「幸せのちから」で主演して、日本でも好評だった。そんな彼の主演ということにひかれて映画館に足を運んだ。 正直なところがっかりし、ブログに書くこともやめようかと考えた。

 原作は有名なSF小説「地球最後の男」(リチャード・マシスン作)で、3度目の映画化という。 がん征圧のために使用したウイルスが原因で人類のほぼ9割が死滅し、無人と化したニューヨークで科学者ロバート・ネビル(ウィル・スミス)が生き残り、人類再生のために動物実験を重ねてウイルスを制圧する血清を見つけようとするストーリーだ。

 映画はCGを最大限に活用し、廃墟のビル街を鹿が走り回る冒頭のシーンから迫力のある映像が展開される。それにしても、映画づくりが粗っぽいという印象を免れることはできないのではないか。 ウイルスに犯された人間と犬たちが凶暴化し、主人公と愛犬を襲う。愛犬は死に、主人公は「ウイルスのない街」に移動する途中の女性に助けられる。

 この後の展開は控えることにするが、つくりが大雑把すぎることに失望した。 ウイルスに犯された人間が凶暴化するにしても、映画のように超人的に飛び跳ねることができるのか、主人公を助けた女性が目指す「ウイルスのない街」がなぜ存在するのか、アメリカ政府や国連はどうしているのかなど、疑問が次々に湧いてきた。

 映画をつまらなくした要因を私流に考えれば、主人公と常に行動を共にしていた愛犬を死なせてしまったこと、ウイルスに犯された女性が血清注射の結果回復しつつあることを描きながら、結局この女性も主人公もろとも犠牲になってしまうなど、ストーリー展開に工夫が足りないのだ。

 要するに、全体的にマイナスイメージが強すぎる。 ウィル・スミスの演技以前に、内容がつまらないのだ。自宅近くに最近できた最新式の設備を誇るシネマックスだけに、迫力ある映像、音響も素晴らしい。だが、この映画を見る人は少なく、場内は閑散としていた。それが、この映画の限界を物語っているように思えた。