小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

150 私が住んだ街・12札幌(4) 藻岩山の植生に異変

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 札幌の象徴は標高531㍍の藻岩山である。市民はこの山の変化を見ながら、四季の移り変わりを実感するのだ。私も夏はハイキング、冬はスキーを楽しんだ。頂上近くまで道路があり、頂上に行くと、見事な夜景を見ることができるので、観光客にも人気のスポットだ。そんな藻岩山にいま、異変が起きているという。

 街路樹として、1873年に北アメリカから入ってきたニセアカシアがこの山に増え、日本本来の山の植生を破壊しつつあるのだ。札幌の街路樹は、このニセアカシアライラック(リラともいう)、ナナカマドが多い。この中でニセアカシアの白い花は人気が高く、街路樹、公園には欠かせない樹木である。

 しかし、街路樹として歓迎されたニセアカシアが、いつの間にか札幌近郊の藻岩をはじめとする山々に増え始めたというのである。2004年に制定された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法あるいは特定外来生物被害防止法)とい長い名前の法律がある。 この法律は、日本在来の生物を捕食したり、これらと競合して生態系を損ね、人の生命・身体、農林水産業に被害を与えるか与える恐れがある外来生物の被害を防ぐために、こうした「動植物」を「特定外来生物」に指定して、輸入や栽培などを規制しようというものだ。

 この中で、ニセアカシアは「要注意外来生物リスト」の中の「別途総合的な検討を進める緑化植物」に指定されている。いわば、ブラックリストに入っているというのだ。その理由を札幌の森を守ろうと、活動を続ける森林ボランティアの話を聞いて、納得した。

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 ニセアカシアのタネが藻岩山や札幌近郊に飛んで、いつの間にか、街路樹のはずが山にもこの木が目立つようになったというのだ。藻岩の場合、スキー場と反対側では、既に3分の1近くがこのニセアカシアで覆われてしまった。

 ニセアカシアは、美しい花が咲く半面で幹に鋭いとげがあって剪定しにくく、根から不定芽が多数出て、風でも倒れやすいという難点がある。一昨年秋、大型台風が北海道を襲った。その被害は、藻岩山のニセアカシアにも及んだ。 多くが倒れたのである。そのまま放置すると、不定芽(萌芽)が次々に出て、山が荒れてしまうのだ。

 ボランティアは、倒木排除に活躍し、以来ニセアカシアが他の山でも増えていることに驚いたという。 その結果、現在は「ニセアカシアとの闘い」という目標を持って、活動をしている。これに対し、行政は相変わらず、傍観者的な態度をとっているようだ。  外来種の「セイダカアワダチソウ」が日本の秋の光景を変えたように、ニセアカシアも北海道の山を変えつつあるのである。きょう(8月11日)のように、酷暑の日を送ると、地球温暖化を強く意識する。日本の自然環境も、目に見えて変化していることに、多くの人が気づいてほしいと思う。(2007.8.11)