小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

100 太宰府のタクシー 歴史解説を聞く

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 梅で知られる福岡県太宰府市にある「大宰府天満宮」は、平安時代に生きた天才学者、政治家の菅原道真(天神様とも呼ばれる)を祭っている。 天満宮の裏手には、日本古来の天満宮の建物とは異質な近代的な建物がある。九州国立博物館だ。ここへ行くには、2つのルートがあるが、多くの人は天満宮経由で行く。 博物館は天満宮を見下ろす丘にある。長いエスカレーターを使い、丘の上に立つと、ガラス張りの建物がそびえている。それが九州国立博物館だ。

 この4階には「文化交流展示室」があり、縄文時代から江戸時代までの様々な遺跡や書画が展示されている。所用で短時間にこの展示を見てタクシーに乗る。 運転手はのんびりしている。「天満宮に行って来たのか」「博物館は」「天満宮の参道で売っている梅が枝という菓子は一番うまいのはあの店です」と、いろいろと解説する。

 さらに、こちらが「天満宮はのぞく時間がなかった」と答えると、とうとうとその歴史を語り始めたのだ。それはなかなかの解説だった。話がうまく、疲れていても眠くはならなかった。 こうした運転手たちは、大宰府観光に一役買っているに違いない。 家に帰って、博物館でもらったパンフレットを見た。すると、くだんの運転手が話してくれたことがコンパクトに載っていた。だが、運転手の思い入れのこもった話の方がもちろん面白く、頭に残っている。

 観光地でこうした運転手の存在は貴重だ。ただ、彼らにお願いしたいのは、話に夢中になって、運転をおろそかにしないでほしいということだ。 大宰府の運転手は時に話に熱中し、ハンドルから手を離す。この様子を見て、はらはらしたことを忘れられない。(07.3.28)