小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

20 フラガール  実話を描いた傑作映画

  常磐ハワイアンセンター(現在のスパリゾートハワイアンズ)の名前を知っている人は、たぶんに年輩の方だろう。昭和4O年(1965)福島県いわき市にあった常磐炭鉱は閉山の危機にあった。そんな町を支えるために、プロジェクト事業として、ハワイアンセンターができたのである。そして、目玉はフラダンスショーだった。

  ダンサーはすべて、炭鉱に働く家の女性だった。彼女たちを育てたのが、日本フラダンス界の第一人者カレイナニ早川(現在74歳で)である。カレイナニ早川とダンサーたちのダンスショー開始までの実話を映画にしたのが李相日(イ・サンスル)監督のフラガールだ。カレイナニ早川をモデルにした元SKDのダンサー、平山まどか役は松雪泰子フラガールのリーダー紀美子役は、将来性豊かな蒼井優。そして、南海キャンデーズのしずちゃんこと山崎静代も不器用ながら、父親の死の悲しみを乗り越え、一員として成長する小百合役をこなした。

  日本の炭鉱は栄光と没落の歴史をたどった。かつて石炭は「黒いダイヤ」といわれたほど、日本のエネルギーを支える大きな柱だった。しかし、石油の普及で石炭業界は急速に斜陽産業へと移行してしまう。フラガールは、こうした時代を背景に、懸命に生きようとする女性たちの姿をエンターテーメント性豊かに描いた作品である。

  俳優たちが福島の方言を見事にこなしているのに感心した。特に松雪と蒼井が「デレスケ」(バカヤロー)と言い合う場面はこの映画のクライマックスだ。フラガールは、戦後の歴史の1ページを描ききっていて、なぜか郷愁を感じる。それは、ことし前半にヒットした「always 3丁目の夕日」と共通するものがあるのだ。

  圧巻は晴れ舞台で、踊るフラガ-ルたちの表情だ。みんな目がきらきらと輝き、夢を達成した喜びを表している。こんな生き生きとした顔をした若者に出会ったら、私もうれしくなる。(「always 3丁目の夕日」の続編は07年11月に封切られるそうだ)