小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2197 おかしな世界でも 続・喫茶店での政治・自然談義

 

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 いつもの喫茶店。朝の散歩の後、ふらりと入ると、見知った顔の2人がいた。彼らは、私が店に入ったことに気が付かず、何やら話し込んでいる。「昨日の安倍元首相の国葬は……」という声が聞こえる。ラジオ体操仲間のMさんとKさんの会話だった。昨日は安倍元首相の国葬の日だったが、私には普通の日だった。以下に、今月2回目の2人の喫茶店での会話を紹介する。

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 M Kさんは昨日、どんな一日を送りましたか。

 K 特に何も変わらなかったよ。朝の散歩、午前中のスポーツジム。午後からはBS放送の外国映画鑑賞、さらに読書、夕方にはそろばん塾に行く孫娘の見送り、といった一日だったね。

 M 安倍国葬のテレビはどうでした。私は歴史の勉強と思い、武道館からの生中継を見ましたが……。菅元首相の追悼の言葉はなかなか抒情的でしたね。首相の時は、あんな話はできなかったと思いました。だれかに相談したのでしょうか。

 K 私もニュースのほか、少しは見たよ。テレビ局の扱いも様々だったようだね。喪服姿のコメンテーターがいたのには驚き、チャンネルを回してしまったね。本来なら、国葬となる人物はそれなりに尊敬されるはずだが、安倍氏はそうではなかったとしか思えない。旧統一教会との関係が暴露され、ほとんどのマスコミで、国葬反対の方が賛成を上回ったのは、岸田首相には痛手になるだろうと思うよ。国会の閉会中審査の国葬に関する答弁も説得力が全くなかったね。

 M 2022年9月27日は、歴史に刻まれることになると、私は思うのです。反対の声の中で国葬があり、東京五輪に絡む汚職事件の捜査がさらに進んでいるし、ウクライナに侵攻しているロシアで、予備役の召集を始め、親ロシアの地域ではロシアへの編入を問う「住民投票」というロシアによる不法行為が収まらない。これはきつい言葉でいえば、強盗を正当化しようとする動きだと私は思うのです。イタリアでは極右の女性首相が誕生しましたね。世界はおかしな方向へと踏み出してしまっているのではないでしょうか。

 K そうだね。特にロシアがやっていることは滅茶苦茶だね。もし、ロシアがこの戦争に勝ったなら、世界はますますおかしな方向に進んでしまうね。でも、私は歯止めとなる、何かが起きると信じているんだ。

 M 実は私もそうです。ウクライナの親ロシア地域では、住民投票と称して市民の自宅玄関前まで投票箱を持ち込み、投票を強要しているのをテレビで見ましたが、これでは賛成票が圧倒的に多いのは当然かもしれません。ロシアがやっているように、何でもありが通ったら世界の行く末は真っ暗です。そうならないことを私も願っています。ロシアから国外に脱出する市民が約6万6千人になったとEUの専門機関が発表しています。ロシアの行く末に絶望した国民が増えているのでしょう。
 きょうは午後から講演会をオンラインで聴く予定があるのです。佐藤卓己という京大大学院教授でメディア論が専門の先生が講師で、ある雑誌で「いま誰もが納得できる形でウクライナ戦争の真実の姿を示すことは、政治家にもジャーナリストにもできない。おそらく後世の歴史家の仕事となる」と書いている文章を読んだことがあります。確かにその一面はありますが、ジャーナリストは真実を追求することを放棄してはならないと思うのです。個々の事実の積み重ねが全体像を明らかにすることにつながるのではないでしょうか。

 K Mさんは好奇心があるね。安倍氏の国葬で、一般用の献花台に花束を持った人たちの長い行列が続いたと、テレビは報道していたが、君はどう思う。

 M 私は、日本人は情緒的な人が多いなと感じました。あの人たちは、本当に安倍政治を評価しているのでしょうか。自民党と旧統一教会との関係は、日本政治の信頼性を揺るがせる深刻な事態だと思うのです。
 ところで、金木犀が咲き始めましたね。私はあの香りをかぐと、心が落ち着くのですよ。


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 K 今年は去年に比べ、遅い開花だったね。たしか去年は9月の10日ごろに1度目の花が咲き、さらに10月初めに2度目が咲いたから、よく覚えているんだ。気候の変化に敏感な植物なんだろうね。私の家にも2本この木があるんだが、これからはしばらく「むせる」ほどのにおいがすると思う。

 M けさ、ラジオを聴いていましたら、東京の向島百花園の萩が見ごろになったという話題をやっていましたね。いよいよ秋ですね。私はかなり以前ですが、あそこに行ったことがあり、萩のトンネルをくぐったことを思い出しました。風情を感じました。Kさんはどうですか。

 K 私は行ったことはないよ。でも、萩と言えば仙台の野草園を思い出すね。学生時代によく散歩をしたんだ。仙台出身の作家で佐伯一麦の『鉄塔家族』という小説にも出て来る、いい公園だよ。実はこれまで誰にも話したことがないんだが、妻とは野草園で初めて出会ったんだよ。その後、幾つかの偶然があって、結婚したんだ。だから長女は野子(のこ)、長男は草太(そうた)という名前を付けたんだよ。ふたり合わせると「野草」になるからね。

 M そんなことがあったのですか。素敵なことですね。じゃあ、野草園は思い出の場所ですね。そう言えば土井晩翠も仙台出身ですね。旅行した時、晩翠が晩年に住んだという家を見たことがありました。

 K 晩翠草堂だね。あの家にはヒイラギモクセイという木があって、晩翠の命日である10月19日ごろには白い花が咲くと聞いたことがあるよ。あれもモクセイ科なのだろうが、香りはあまりしないようだね。

M 私は現役当時、中国に3年間駐在したことがあります。奇峰奇岩で知られる桂林にも行ったことがありますよ。金木犀の街としても知られています。秋、私が行ったときも街全体が金木犀の香りに包まれているようでした。金木犀は公害に弱いそうですから、どうなったか心配です。中国のPM2・5の大気汚染問題は深刻ですからね。

K 生き物には生命力が備わっているから、耐え抜くことができると信じたいね。原爆でやられた広島ではアオギリや柿の木が生き残り、長崎でもクスノキの大樹が被爆に耐えて生きていたという話を聞いたことがあるよ。Mさんの家の近くの街路樹も金木犀だったね。車が多いのに元気に育っているし、大丈夫だよ。金木犀も……。

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2人の話は国葬から自然界に移っていた。このブログを書いている2階の部屋まで金木犀の香りが漂っている。

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