小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2577 ブーゲンビリアとムクゲへの呼びかけ 花を愛でる日戻れと

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(満開のブーゲンビリア)

「ブーゲンビリア」の花(白、赤、紫、ピンクなど)を見ると、だれしも南国を連想するでしょう。南アメリカの熱帯雨林が原産のオシロイバナ科の半蔓性の低木です。最近は私の住む首都圏でもそう珍しくない花になっています。この花の名前はフランスの探検家が由来だと聞くと、どんな人物なのかと興味が湧いてくるのではないでしょうか。間宮林蔵は「間宮海峡」という海峡名を残しましたが、花の由来となった探検家は世界周航を試みた海軍士官でした。

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その人はルイ・アントワーヌ・ド・ブーガンヴィル(1729~1811)という名前です。航海士で探検家でもありました。彼はルイ15世の命により「ブードゥーズ号」で世界周航をした人です。しかし、新しい発見はなかったといわれています。ただ、この航海には植物学者や天文学者、デッサン画家を同行させ、多くの動植物に関する情報や島の位置を正確につかんだそうです。ブラジルでは1768年に同行の植物学者がこの木を発見、後にこの花はブーガンヴィルにちなんで「ブーゲンビリア」と名付けられたといいます。

間宮林蔵のように、地名や海峡に名前が付く探検家はいますが、花の名前に自分の名が残ったのですかから、天国のブーガンヴィルは喜んでいるのかもしれません。付け加えますと、パプアニューギニアの「ブーゲンビル島」も彼の名前が由来だそうです。

ところで、有名人ならまだしも一般人は何かの記念日以外花束をもらう機会はあまりありません。会社を定年退職した際、帰り際に花束を渡された経験を持つ人は多いでしょうか。私も送別会で花束をもらったのですが、電車の中持ち帰るのはいやだと格好をつけ、一緒にいただれかにあげてしまい、もらったのが何の花かは覚えていません。以前、取材でラオスの小学校に行った際、出迎えてくれた子どもたちから渡されたのがブーゲンビリアの花束で、カンボジアでも同様に、この花束をもらったことがあります。南の国の花束といえば、この花が定番の一つなのでしょうか。

私は、夏の花といえば、ブーゲンビリアとともにムクゲ(木槿)を連想するのです。周辺のあちこちでも、最近白やピンクのムクゲが咲き始めたのを見かけました。中国原産の花ですが、お隣韓国では「国花」として、親しまれているそうです。白いムクゲの花に「祇園守り」と呼ばれる種類があるそうです。7月、祇園会(ぎおんえ=八坂神社の祭礼~祇園祭り)のころに咲くので、こういわれています。日本でもムクゲは親しまれる夏の花の一つなのでしょう。八坂神社には、この白い花のムクゲがあるそうです。京都の夏。祇園祭りのメーン、宵山~山鉾巡行が近づいていますね。

日本には国花の規定はありませんが、「桜」を国花と思っている人は少なくないのではないでしょうか。花はそれぞれ好き嫌いがありますから、国花として、わざわざ一つの花を決めなくともいいのかもしれません。

散歩をしていると、さまざまな花が咲いているのを見かけます。日本原産の花も、海外からやってきてまるで日本原産のようになっている花、依然として「異国情緒」が漂う花……私は嫌いな花はありません。ですから、花を見る楽しみがある朝の散歩は欠かせません。目を海外に転じますと、血生臭い戦争のニュースが絶えません。そうした命の瀬戸際で生きる人々が、のんびりと花を愛でる日が戻って来ることを願いながら、私は毎朝花に語りかけ続けているのです。もちろんブーゲンビリアにもムクゲにも……。

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(白いムクゲの花)
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(鉢植えのブーゲンビリア)
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(ムクゲとともにアオイ科フヨウ属のフヨウの花)