散歩をしていたら、私がひそかに「小言幸兵衛」(古典落語に出てくる長屋の家主のこと)と呼んでいる大先輩がぶつぶつ何かを言いながら歩いていた。追いついて「どうしたのですか」と聞いたら、いつもの小言が始まり、散歩の間聞かされる羽目になった。それは「二階兄さすが知恵ありワシも乗る」という川柳を含めた自民党の裏金問題の処分のひどさに対する小言というより、怒りだった。聞いている私にもそれが伝わってきた。以下は、大先輩の話だ。
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自民党は安倍派や二階派らの関係議員39人に対し、離党勧告(安倍派幹部の塩谷元文部科学相と世耕前参院幹事長2人)から戒告まで39人の処分を発表したね。でも、自民党総裁の岸田首相と二階元幹事長は処分から外れている。おかしいと思わないかね。この川柳は処分を免れた首相の心境を私なりに推測したもので、大政治家の身の処し方に対する皮肉を込めたつもりだよ。下手だなあと笑わないでよ。
それにしても二階氏は狡猾だね。先月25日に、この問題で会計責任者と二階氏の秘書が立件されたことの責任を取るため次の選挙には出馬しないと発表した。でもあの記者会見は、どうみても反省の態度ではなかったね。選挙に出ないのは高齢のためかと聞かれて怒り出し、質問した記者を「ばかやろう」と言ってしまった。まさに反省なしを「態度で示した」と言えるね。
これをもって二階氏自身は処分を免れ、首相も解散するまで会長を務めていた岸田派の元会計責任者が立件されたにもかかわらず、二階氏不処分のため自身の処分はないものとした。普通の感覚なら「李下に冠を正さず」で、処分されるはずが二階氏の奇手にうまく便乗した形だと思う。「政治責任」という言葉は、岸田首相の辞書にはないのかもしれない。だから、私はこんな川柳を思いついたんです。しかし、自民党を率いる責任者として、これで済むわけではないと思う。民間会社でこんな金にまつわる不祥事があったなら、社長はとっくにやめているよ。いずれ、しっぺ返しがあるのではないか。
先日、物理学者で随筆家、寺田寅彦の随筆集を読んでいたら、なかなか含蓄のある言葉が出ていた。「いわゆる頭のいい人は、言わば足の早い旅人のようなものである。人より先に人のまだ行かない所へ行き着くこともできる代わりに、途中の道ばたあるいはちょっとしたわき道にある肝心なものを見逃す恐れがある」(『寺田寅彦随筆集 第4巻』「科学者とあたま」より・岩波文庫)。どうだろう。私はこの言葉が妙に気になっている。
二階氏はこの随筆に書かれている「頭のいい人」なのだろうね。逃げ足も速い。確かに、人がまだ行かないところまで見たのかもしれない。首相もそれを真似しているように、私は思えてならないんだ。だから「途中の道ばたやわき道にある肝心なものを見逃す恐れがある」と、私は思うのだ。言い換えれば、「裏金問題に対する国民の怒りを見逃している」と言ってもいい。あなたはどう思いますか。そうそう、安倍派は一昨年、一度パーティー金のキックバックをやめると決めたはずなのに、再開したのはだれが、いつ、どのように決めたのかも全く分からない。うやむやにしようというのだろうか。自民党の裏金問題のかぎを握るという森元首相には、岸田首相が電話で話を聞いたそうだが、これも形だけだね。まあ、この問題は大山鳴動して鼠一匹、ということかな。ああ、ひどい、ひどい……。
大先輩は常々、世界や日本で起きている様々な事象に興味を持っていて、私と会う度に小言めいた話をする。それがなかなか面白いので、私はいつも聞き役に回っている。今日もそうだった。先輩はこの後、ひとりでいつもの喫茶店に入って行った。そこでも顔見知りがいれば、また小言を繰り返すのかもしれない。
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