小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2466 ひとりカワセミを見る 心折れない思い

カワセミ3
 冬川の翡翠を見し一人かな 岡井省二 近くの公園を散歩していたら、池の端にある木の枝に2羽のカワセミ翡翠)が止まっているのを見かけました。カワセミは俳句では夏の季語ですが、この公園で見かけるのは冬の方が多いのです。この池から流れる小川に沿って、活動しているようです。それにしても「つがい」を見たのは久しぶりのことで、勝手に吉兆と私は思ったものです。カワセミは幸せを呼ぶこと、良いことが起きることの象徴と言われているからです。
にほんブログ村 ニュースブログへ
にほんブログ村

 手元のスマホでは、カワセミを撮影することはできませんでした。私が少し近づくと、さっと遠くへと飛んでいくのです。警戒心が強いのですね。少し前に古代ギリシアの寓話集『イソップ物語』を例にブログを書きましたが、カワセミについてもこの寓話集にありますので、紹介しましょう。



 カワセミは人気のないところを好み、人間に捕まるのを警戒して海辺の断崖に巣を懸けている。ある時カワセミが岬にやって来て、海に突き出た岩で雛を育てることにした。ところが親鳥が餌を探しに出かけると、突風のため海が波立って巣を洗い流し雛は死んでしまった。戻ってきた親鳥はそれを知って「ああ、情けない。陸は安心できないと警戒して海辺に来たのに、ここがなお信用できない場所だったとは」と嘆いた。このように人間の場合でも敵を警戒する余り、敵よりはるかにひどい味方に遭遇することもあるのだ。》(25話)



  イソップ物語は、動物などの性格や行動に託し、一般大衆に対しいかにしたら平穏に人生を送ることができるかを教示したものです。25話は、危険というものは、あると思っている人にしか見えないのだ、ということの戒めだそうです。カワセミの警戒心の強いことをとらえ、それでも穴があることを描いているのです。それにしても、この寓話集は動物たちの習性をよく表わしていると感心してしまいます。



 1月も今日を含めて3日しかありません。今度の日曜は立春です。カワセミは眩しいほどの太陽光の中で、美しい姿を見せてくれました。「翡翠は川の宝石光り飛ぶ 竹葉英一」という句の通りだと思うのです。季節はめぐります。光の春は近いといえるでしょう。厳寒期にある能登半島地震の被災地にも、必ず春はやってくるのです。



 「心だけは折れないように頑張ってきました」。大相撲初場所で9回目の優勝を果たした横綱照ノ富士が優勝インタビューで口にした言葉です。大けがで大関から序二段まで下がりながら奮闘し、横綱に昇進した照ノ富士の言葉は重いと思います。「心が折れる」思いの人々は、能登半島地震の被災地やガザ地区など世界中に数多いといえるでしょう。それでも、カワセミのつがいを見た私は、そんな人たちに温かな光が当たると信じているのです。

DSC_0191

 写真 以前に撮影したものです。

 2510 あらら!「山のお産」だ 自民党派閥の裏金事件捜査終結

 1963 空飛ぶ宝石との出会い 戻ってきたカワセミ



 1528 自然公園の晩秋風景 狙いはカワセミとカメラ老人



 1431 冬・翡翠との出会い『よだかの星』を読む



 210 カワセミとの出会い 師走のやすらぎ