
スーパーに行くと、入り口付近の目立つ場所に「備蓄米」が山積み状態になっている。5キロで2000円前後。「倉庫に売るほどもらった米がある」と演説し、事実上の更迭となった江藤拓前農水相の後を継いだ小泉進次郎農水相が古い備蓄米を随意契約で安く放出した。当初は飛びついた消費者も今は冷静になっていることの表れだろう。その反面、スーパーでは、消費者に銘柄米を買ってもらおうと、苦肉の策を講じている。よく考えたものだと感心する一方で、あきれた思いもする。
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それはどんなことか。備蓄米はそれぞれの店で独自の名前を付けて売っている。値段は消費税込みで5キロ1900円から2100円くらいまでの幅があるが、安いに違いない。ほとんどが備蓄米は5キロで販売している。この「5キロ」がミソなのだ。あるスーパーでは、備蓄米の横に、さまざまな銘柄米が置かれていた。その多くが4キロ単位で、5キロと1キロは1銘柄ずつしかなかった。銘柄米は価格が高い。4キロ単位だと3100円台から4000円まで幅がある。5キロにしたら、さらに高くなるから、備蓄米の隣では価格の高さが目立つことになる。
そのためには、1キロ減らして4キロ単位で販売すれば、値段も少しだけ安く見える。私がその銘柄米を見ていた時、やってきた60を超えたと思われる夫婦らしい2人が「5キロ単位ではないのか、5キロと思って買い、家に帰って4キロと気づく人もいるかもしれないね」「売るために頭を使っているね。詐欺ではないが、目くらまし的商法だな」という会話をしていた。その通りだ。それを聞いてこの商法を考えた人は狡猾だと思った。もちろん法律には触れない。しかし、おかしいと思う。
米価格が高騰し、放出された備蓄米を買うため、消費者が行列を作ったのは、夏前のことだった。猫の目行政といわれる農水省は、価格高騰は米不足が原因だったと明かし、来年度は減反から増産に米政策を方向転換するという。8月も中旬。早場米地域からは新米収穫のニュースが間もなく届き始めるはずだ。価格の高い銘柄米の在庫がどれほどあるのか、よく分からない。だが、目先を変えて早く売り切ってしまわないという焦りが、小売業界にはあるのではないかと想像するのだ。
新米の其一粒の光かな 高浜虚子
新米といふよろこびのかすかなり 飯田龍太
(新米は秋の季語)
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