小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

2087 アナログへの回帰再び 新聞と行政の協定に衝撃

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 今年は私にとって「静」の漢字が似合う一年だった。ほとんど遠出はせず、東京の美術館には2回しか行かなかった。それでも自宅周辺の散歩だけは欠かさなかった。このほか古いレコードをアナログプレーヤーで聴き直し、それだけでは治まらずに長い間使っていなかったカセットテープ・デッキの埃を払って昔録音したクラシックのテープを入れてみた。レコードプレーヤーに次ぐ、アナログ時代への一時回帰である。

 録音テープの耐久性はよく分からない。何度も繰り返していると擦れ切れるとはいうが、私が持っている数十本のテープはそれほどでなく、デッキに入れると意外といい音が出た。このブログを書きながら聴いているのは、リストのピアノ協奏曲第1番で演奏はNHK交響楽団(指揮者不明)、ピアノは小山実稚恵、87年6月20日の生放送録音だ。小山は82年のチャイコフスキー国際コンクールピアノ部門3位、85年のショパン国際コンクールで4位になった実力派ピアニストで、手元にはこのほかにも小山演奏のテープが何本か残っている。

 カセットテープ(デッキ)は70年代から80年代にかけて音楽用の記録メディアとして人気を集めた。しかし90年代に台頭したCDとMD、2001年のiPodの登場などで需要が急減、生産を打ち切るメーカーが相次いだ。レコードプレーヤーも同様だったが、こちらは音質の良さもあって最近見直しされつつあるようだ。しかしテープデッキの方は苦戦が続いているらしく、アマゾンやヤフーショッピングでラジカセを除いてそれらしい物は見つからない。世の中はアナログからデジタル時代へと確実に変化したことは間違いない。テープデッキはいまや前世紀の遺物になりつつあるようだ。とはいえ私の手元にある貴重な音源テープは捨てられないから、懐古趣味と笑われてもテープデッキに時々電源を入れ、大事にしようと考えている。

 時代の変化といえば、驚くべき動きが大阪であったことを記したい。大阪府読売新聞大阪本社が[公民連携]という名の包括連携協定を締結、27日午後締結式をしたというニュースである。大阪府のHPによると、地域の活性化と府民サービスの向上を図ることを目的に教育・人材育成、情報発信、安全・安心、子ども・福祉、地域活性化、産業振興・雇用、健康、環境など8分野にわたって包括連携協定を結んだという。

 大阪府の吉村洋文知事は日本維新の会副代表、大阪維新の会代表であり、大阪は維新という政党の牙城ともいえる地域だ。新聞の役割は言うまでもなく国(政府)や自治体の動きをフォローし、監視する役割を持つ。政党もその対象だ。行政と新聞社が協定を結ぶことで行政(政党としての維新の会)への批判は果たしてできるのだろうか。協定に「情報発信」が含んでいることから新聞社が行政の「宣伝機関」に成り下がってしまう恐れがあるのではないかと危惧する。これは報道機関の自殺行為ではないか。それを想像できない新聞社は、もはや報道機関ではないといっても過言ではないだろう。

 戦争へと突き進んだ戦前を思い起す。あの時代、新聞だけでなく報道機関全体が政府・軍部の宣伝機関になってしまい、国民総動員、一億玉砕が叫ばれ、おびただしい命を奪い、失った。決して、そうした時代に戻ってはなるまいと思う。年の暮に嫌なニュースを見てしまった。これは私の考えすぎだろうか。