小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1405 見えそうな金木犀の香り 開花した秋の花

画像画像見えさうな金木犀の香なりけり(津川絵理子) 金木犀が開花した。例年よりかなり早い。辞典には「中国原産で、仲秋のころ葉腋に香りの高い小花を多数つける。橙色の花を開くのが金木犀、白いものは銀木犀という」と出ている。わが家には金木犀が2本、銀木犀が1本あるが、後者は花が咲いても香りはあまりなく、気をつけないと、いつのまにか花が散っていたりする。 『地球の歩き方』(ダイヤモンド社)という旅行案内書の中国・桂林編には「桂林の桂は中国語で金木犀の意味。つまり、桂林は金木犀の林の街ということになる。その名のとおり、桂林市内には45万本の金木犀の木があり、秋にはいっせいに花が開き、街中が黄色の花と香りに包まれるという」とある。45万本の金木犀の香りは想像がつかない。どれほどのものなのだろう。かつて桂林への旅を計画し代理店に費用を支払ったあと急用で中止したことがあり、金木犀が開花すると、この苦い経験を思い出す。 金木犀の強い香りをかいていて、花はなぜ香るのかを考えた。一般的には、花の香りは昆虫などを引き寄せるためのカクテル(香気成分)だといわれている。ただ、私たち人間にとってユリやバラのように心地よく感じるものと、逆にハッカクレンのように悪臭に近い香りを持つ花もある。いずれにしても花が美しく、芳香のある植物は、人間世界の争いを鎮める力があると、信じたい。 最相葉月はノンフィクション作品『青いバラ』(小学館)で、「青いバラをつくろうとするのであれば、バラの重要な要素である香りも念頭に入れるのが当然ではないかと思った」と書いている。植物の品種改良が進んでいる。穀物や果実であれば収量と味を追求し、花がメーンの植物は美しくて花期も長いものがそのテーマなのだろう。だが、香りを重点にした花の研究があっていいのではないかと思う。 『日本の七十二候を楽しむ』(東邦出版)では、金木犀について、こんなふうに解説している。「つやつやした常緑の葉に、橙色をした小花がたくさん咲きはじめるのは、9月下旬、10月上旬。手のかからない金木犀はすくすく育ち、小鳥が舞い来て遊んでいく。近くを通りかかると、ああ金木犀が咲いているな、とわかるほど、甘い香りが特徴的」 これから2、3週間、私の住む街も、金木犀の香りに包まれる。 1161 秋の彩(いろ)は芳香とともに 金木犀の季節 866 キンモクセイの季節 オトコエシも咲いた 1300 いわし雲の季節に 子規去り112年 写真 左は金木犀、右は銀木犀