小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1346 過去と向き合う姿勢 「パリよ永遠に」とメルケル首相来日

画像来日したドイツのメルケル首相が講演で、第2次大戦中に関係が悪化した周辺国との和解には「過去と向き合うことが重要」との認識を示し、不倶戴天の敵だったドイツとフランスの関係が和解から友情に発展したのは「両国民が歩み寄ろうとしたところから始まった」と語った―というニュースを読んだ。かつてドイツはフランスを占領し、ヒトラーはパリの主要な建造物を爆破する命令を出した。この命令は実行されず、美しいパリの街が救われたことは歴史的事実である。 フォルカー・シュレンドルフ監督の映画「パリよ永遠に」は、ヒトラーのパリ壊滅の指示を受けたドイツ軍パリ防衛司令官コルティッツ(ニエル・アレストリュプ)と、パリを守ろうとする、パリで生まれ育った中立国のスウェーデン総領事ノルドリンク(アンドレ・デュソリエ)との駆け引きの実話を基にした映画である。シリル・ジェリーの戯曲が原作で、ほとんどがホテルの一室での2人の俳優の演技で占められている。舞台でも2人が同じ役で演じたという。 ノルドリンクはドイツ軍が駐留する超高級ホテル「ル・ムーリス」の司令官用の部屋を訪れ、コルティッツにパリの建物の爆破をやめるよう説得する。しかし、コルティッツは「命令を実行しないと、ドイツに残っている妻子が処刑されてしまう」と拒否し、説得は容易に通じない。映画は2人のやりとりにほとんどの時間を割いている。最終的にはノルドリンクの誠心誠意の説得でコルティッツは実行を思いとどまる。外交の勝利だった。 戦後70年。現在、フランスとドイツはメルケル首相が言うように、良好な関係を維持している。それはドイツが過去の歴史をきちんと検証し、過去と向き合っているからなのだろう。だが、日本をリードする政治家たちが過去と向き合っているとはとてもいえない。両国は敗戦を克服し、経済大国になった。 しかし、国のあり方としては決定的な差がついている。現在の日本は、隣国の中国、韓国との関係は冷え切ったままであり、関係改善の見通しはつかない。それだけにメルケル首相の話は耳を傾けるべき重い内容を含んでいる。 ドイツは2015年度予算(会計年度は1月からスタート)で、新規国債発行ゼロという無借金化を実現させた。一方、日本は2015年度も約37兆円の新規国債発行を予定している。2014年末の国債や借入金、政府短期証券を合わせた「国の借金」の残高は約1030兆円になっており、財政再建は容易ではない。 それにもかかわらず各役所は相変わらず無駄遣いを続け、政府の財政再建は「先送り」状態といっていい。この点もドイツを見習わなければならない点である。