小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1317 渡り鳥がやってきた 白鳥と皇帝ダリアに寄せて

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今朝は寒い朝だった。散歩コースから見た調整池は、外気が冷えたために発生する水蒸気が上がっていた。渡り鳥の姿も次第に増えている。渡り鳥といえば、白鳥の飛来地で知られる新潟県人造湖瓢湖にも白鳥の季節がやってきたという。知人から写真が届いたのを見て、冬の訪れを実感した。 かなり前に「瓢湖白鳥物語」(吉川繁男著、三省堂)という本を読んだことを思い出し、本棚を探したが、見つからなかった。瓢湖で白鳥(コハクチョウ)の餌付けを始めた吉川重三郎さんの話が中心だったと思う。著者の繁雄さんは重三郎さんの長男で、1954年(昭和29)に餌付けに成功した父親とともに50年以上にわたって白鳥の世話を続け、2006年に亡くなった。2人の世話が功を奏し、瓢湖は毎年1万羽以上が飛来する白鳥の湖になっている。 白鳥は越冬のため、シベリアから数千キロも旅をして日本にやってくる。シベリアは冬季、厳しい寒さによって水面が結氷し餌が取れなくなってしまうため、安全で餌がある地域を目標に飛来する。飛来地としては瓢湖のほか宮城県の伊豆沼、島根・鳥取県にまたがる中海がよく知られている。湖ではないが千葉県印旛郡本埜村の水田にも多数の白鳥がやってきて、「白鳥の郷」と呼ばれる。一度訪ねたことがあるが、おびただしい白鳥の姿とともに見物客の多さにも驚いたことを覚えている。 ドイツの作曲家、フランツ・シューベルトの最後の歌曲集に「白鳥の歌」がある。シューベルトの死後、イソップ物語の「白鳥は死ぬ前にもっとも美しい声で歌を歌う」という伝説に基づいて、シューベルトの遺作である14曲を出版した際のタイトルである。歌詞はレルシュタープ(第1曲~第7曲)、ハイネ(第6曲~第13曲)、ザイドル(第14曲)という著名な3人の詩人が担当している。 広辞苑も「白鳥の歌」について「①伝説で、白鳥が死に瀕して歌うという歌。②転じて、最後の歌。すなわち没前の最後の作歌または曲・演奏などをいう。シューベルト作曲の14曲の歌曲集が著名」と記している。白鳥が死ぬ前に美しい声で歌う(というよりも鳴く)というのが本当かどうか、私には分からない。あくまで伝説なのだろう。 瓢湖周辺では既に霜が降りているだろうか。わが家周辺では霜はまだであり、先日から咲き始めた皇帝ダリアの花が風に揺れている。長い時間をかけ数メートルまで成長したこの花は、霜が降りるまで道行く人を慰める。風といえば、国会周辺では「解散風」が吹き始めたという。まことに変な風である。 写真 1、 瓢湖の白鳥 2、 水蒸気が上がる調整池 3、 咲き始めた皇帝ダリアの花 4、 光に包まれて登校する子どもたち
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