小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1298 hana物語(39) つぶやき17

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「お父」の愚痴を聞く hanaのつぶやき」きょうは、12月にしては久しぶりに暖かい一日でした。居間の窓際で昼寝をしていると、やわらかい日差しが私の体を包んでくれるようで、気持ちのいい時間を送ることができました。私の横のソファーでは、この冬2回目の風邪をひいたという「お父」がごろごろしていました。 ママとちーちゃんが買い物に出かけてしまうと、「お父」は一人で選挙に出かけ、帰ってくるとぼんやりと何かを考えている様子でした。私には何を考えているのか分かりませんが、普段の休みの日よりは難しい顔をしていました。   私はこの7月で10歳になり、老犬の仲間入りをしました。歩くペースは昔よりも遅く、寝ている時間も多くなりました。でも、食欲は以前と全く変わりません。先月は動物病院で前の検診の時よりも体重が増えたといわれ、大好物の果物をあまりもらえなくなってしまいました。私はすぐに太る体質らしく、少し油断すると動物病院の先生から家族が注意されるのです。残念でたまりません。 風邪で寝込んだため、この2日間、「お父」は散歩に付き合ってくれませんでした。それが心配で、朝の散歩は気が進まず、私もぐずぐずしていていましたが、何とか選挙に行ったのですから、明日からは大丈夫だと安心しています。難しいことは分かりませんが、「お父」は選挙の投票から帰って、こんなことを話していました。 「今回の選挙は困ったよ。これぞという人がいないし、信用できる政党もない。社会人になってから棄権をしたことはないが、今度の選挙ほど迷ったことはないよ。テレビでも投票率が前回よりも大幅に下がっていると報道しているから、多くの人が同じ気持ちなのかもしれないな。政治不信がここまで来てしまったのかなあ…」(2012・12) 「お父」の話を聞く hanaのつぶやき きょうは12月16日です。ことしも残すところ、半月になりました。「お父」のつぶやきは続いています。 「ことしもいろいろなところに旅をしたよ。その分、ハナ君(こんな風に呼びかけてくれる時もあります)と一緒に散歩できない日がかなりあったね。数えてみたら、海外2回を含めて今年は24回遠出の旅をしたんだ。どこが良かったかって?そうねえ。1月の富山では立山連邦を見たし、11月の石垣島のサンゴの海もきれいだった。9月に行ったトルコもそうだが、思い出に残る風景は数多いよ。でもやはり、昨年と同じく9回行った東日本大震災の被災地の光景が一番印象に残っているな。被災地で出会ったある人は、がれきは次第に片付いているが、街と人の心の復興はまだまだだと話してくれた。それが忘れられないな」  内緒ですが、「お父」がこの冬2回目の風邪を引いたのは木曜の13日夜、「しし座流星群」という流れ星を見に一人で外に出て、体を冷やしてしまったからなのです。「お父」が外から帰ったのは約20分後でした。「かなり大きな流れ星を見たよ」とご機嫌で帰ってきたのです。でも、その結果の風邪ですから、家族からは「短い時間なのに、風邪をひくなんて…」と笑われていました。「お父」も歳なのですから、無理は禁物だと教えてやりたいと思いますね。  そうそう、もう一つ報告することがあります。昨年1月に生まれたみーちゃんの女の子が、家に遊びに来る度に、寝ている私の背中に乗って「パッカ、パッカ」と体を揺らすのです。「お馬さんパカパカ」のつもりのようです。まだそんなに重くないので、我慢をしています。当分、付き合いたいと思いますが、いつまでできるかなあ…(2012・12) 似顔絵の私 hanaのつぶやき 「お父」が家族に一枚の絵を見せて「どう、ハナに似ているだろう」と、自慢していました。それはどこかで見た写真にそっくりだと思います。そうです。「お父」のブログに載せてある私をモデルにした絵だそうです。 きょう、「お父」は銀座3丁目で開かれている「いのちをみつける犬」という写真展を見に行きました。その会場には、筑波大学の芸術専門群3年生で日本画を専攻している本橋夏子さんという学生が「愛犬の似顔絵」描きのボランティアとして詰めていたそうです。絵のうまさに感動した「お父」は、私が写ったブログの写真を見せ、この絵を描いてもらったそうです。 この写真展は、名前の通り、災害の現場に出てがれきの中などに閉じ込められた人たちを探す活動をする「救助犬」を取り上げたものです。救助犬を訓練しているNPO救助犬訓練士協会という団体が、救助犬の存在をもっと世の中に知ってもらおうという目的で開いたのだと「お父」は家族に説明していました。 写真展には昨年の東日本大震災の現場をはじめ、いろいろな災害現場で活躍する私の仲間の姿があったそうです。震災の時には訓練士協会の人たちは直後に宮城県に入り、自衛隊と一緒に生存者の捜索活動をしました。亘理町の荒浜では住宅の2階に取り残されて助けを待っていた80歳代の老夫婦を見つけて救助しましたが、そのあとは生存者を発見することはできなかったようです。 「早く現場に行かなければ、生きている人を探すのは大変なんだ。時間との勝負なんだよ」というのが「お父」の解説です。 被災地に入った私の仲間たちはへとへとに疲れ切ったそうです。「大変な現場だもの、犬だって命がけなんだよ」と「お父」は解説してくれました。そういえば、韓国からきた救助犬は捜索現場で足に大けがをして、訓練士協会のメンバーのお医者さんが手当てをしたというエピソードもあったそうです。 「お父」は、救助犬についてこんなことも家族に話していました。 「救助犬は、災害の現場に出て行方不明になった人を探すのが役割だ。だから、生きた人を探すという前提で訓練をしている。被災地では多くの行方不明の人が残っているが、生存者以外に救助犬は反応しないので、災害から時間が経ってしまうと残念ながら役目を果たすことはできなくなる。だから、一刻も早い出動が必要なのだ。外国では災害救助犬に対して理解を示している国もあるが、日本は立ち遅れている。国として救助犬の基準もないのが現状だそうだ」 ところで、本橋さんに描いてもらった絵は、私が見てもかわいくて、若々しい雰囲気があります。私は10歳なのですが、できればこの絵のように若返りたいと思います。ママは「目をとてもきれいに描いてもらったわ」と喜んでいました。本橋さんありがとう。(2012・12)