小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1292 hana物語(33) つぶやき11

画像「いい加減な飼い主のこと hanaのつぶやき」2月もあと1週間で終わりです。人間には寒い季節でしょうが、私のような犬には、夏に比べたらすごしやすい方です。きょうは、私の家で一番いい加減な「お父」の話をします。きょうの出来事です。

夜、「お父」を迎えにちーちゃんが駅まで行きました。駅の階段で足が肉離れになったという電話で、ちーちゃんが車で向かったのです。駅にだれかを迎えに行く時には私も一緒に行くのですが、きょうはダメと断られました。

 間もなく「お父」とちーちゃんが帰ってきました。ちーちゃんはげらげら笑っています。私は耳を立てて、ちーちゃんがママに報告するのを聞いていました。

「お父は私の車の前に止まった車に近づいて乗り込もうとドアに手をかけたんだよ。そしたら、後ろにいたおじさんに、違う、違うと注意されたんだ。なぜだか分かるかな。その人の車だったのさ。その車はうちのと同じ車種、色も一緒だったんだよ。でも、間違うかなあ…。ナンバーを見ればすぐに違うと気付いたのに」

そんな話でした。そういえば、最近、私の家では新しい車になりました。私は車が大好きなのですが、新しい車のにおいをかいだだけで乗るのが嫌になりました。新しい家の木の香りなら、私だって好きなのですが。

なぜ、いつもは慎重な「お父」が車を間違ったのでしょうか。会合があって、少しアルコールが入っていたようです。でも、目の方はまだ自慢するぐらいいいと聞いています。「お父」は、みんなに笑われて、言い訳をしていました。

 「迎えに来てくれると聞いて、車を見ていたら、ちょうどうちのと同じ色(黒)の車が来たので、ああ、あすかだと思って、近づいたんだよ。でも、後ろから来た人に、違う、違うといわれて、運転席を見たら若い男が座っていたので、びっくりしたよ。ははは…」

 

「お父」に言わせると、うちで購入した車は最近のベストセラーなのだそうです。そのせいか、街のあちこちで同じ車を見かけることがあります。それなのに、アメリカではいま大変になっているんだと、「お父」がママに話しているのを聞いたことがあります。なぜ問題になったのか、いろいろ理由があるようです。

私は、このメーカーの前の車が大好きでした。車内が広くて、後部座席の窓から上半身を出すのがうれしいのです。家族は「ああハナの暴走族が始まった」と笑います。暴走族が窓から身を乗り出す格好とそっくりなのだそうです。新しい車になってからは、「お父」は、窓を少ししか開けてくれませんので、暴走族の真似はできなくなりました。

「お父」は、けさの散歩の後、一緒に行ったちーちゃんに怒られていました。散歩コースに笹の葉が多い場所があります。私はその場所が大好きで、そこに行けば、笹を食べるのです。笹を食べると、胃の調子がよくなるのです。「お父」は、「ほら、あそこに行くぞ」と言いながら、笹の葉の場所に連れて行ってくれました。ところが、私が笹を食べ始めると、リードを引っ張って、速く歩いてというのです。仕方なく歩き始めたのですが、それがちーちゃんには不満だったようです。もう少し、私の好きなようにしてやればと思ったようです。だから、家に帰って文句になったのでしょう。

私から見ると、「お父」は「お天気や」です。機嫌のいいときは、あきるくらい遊んでくれますが、逆のときは相手にしてくれません。でも、私はそんなお天気やの「お父」が好きなのです。ただ、順番ではわが家では最下位ですが…。(2010・2)

「うれしかった8歳の誕生日 hanaのつぶやき」

蒸し暑い日が続きますね。毛皮を着た状態の私には息苦しくてつらい毎日です。先日も夜中に苦しくなり、家族を起こしてしまいました。この7月1日が私の8歳の誕生日でした。家族は、ケーキの形をした豆腐に8本のロウソクを立ててお祝いをしてくれましたが、「お父」は「もうハナもおばさんなんだな」と言って、笑っていました。そうなのです。そんなトシに私もなったのでした。

家族が話をしているのを聞いていましたら、私たち犬族は人間よりかなり速く年をとるのだそうです。一般的には1ヵ月の犬は1歳の人間の赤ちゃんに相当し、1歳の犬は人間なら17歳、5歳で36歳、8歳では48歳に当たるといわれています。それは小型犬の場合で、私のように大型犬ではもっと年の取り方が速く、5歳で人間の40歳、8歳だと61歳相当という説もあるようです。

その説が正しければ、私は還暦を過ぎた犬ということになります。でも、先日「お父」と散歩をしていたら、近所のおばさんから「あら若い犬ですね」といわれました。外見が若づくりらしい(私は普通だと思うのですが、家族はそう思い込んでいるようです)ので、そう見えたのだと思いますが、「お父」はうれしそうで、家に帰ると早速、そのことを家族に報告していました。

自慢するわけではありませんが、8年も生きていると、私も何となく人間の言葉が分かるようになってきました。言葉だけでなく、物を見ただけで家族が何をするかも理解できます。私は車に乗るのが大好きです。ですから、「お父」や家族のだれかが車のキーを持ったら、体がむずむずしてきます。

「お父」が引き出しの中から、運転免許証が入った定期ケースを出しただけで、車に乗せてくれるのかとうれしくなって、尻尾を振って「お父」にまとわりつきます。

最近、家族は車に乗せてくれる時には「さあ」という言葉を言うようになりました。寝ていても私はこの言葉を聞くとむっくりと起き上がりますし、家の中をぐるぐる回ったりします。こんな私の姿が面白くて、家族は「さあ、さあ」「車、車」を連発するのです。

私たち犬族は耳もよく聞こえるようです。夜になって、台所でお母さんが炊飯器を洗っている音がすると、どんなに眠くても2階から降りて台所の近くまで行きます。音で分かるのですが、私の姿を見てお母さんは、炊飯器に残っていたご飯を必ず「夜食」としてくれるのです。

私には小さな親類がいます。ミニチュアダックスフンドの「ノンちゃん」です。正しくは「ノア」という名前なのですが、家族は時々遊びにくるノアのことを「ノンちゃん」と勝手に呼んでいます。そういえば、私のことも最近「ハーちゃん」とか「ハー君」と適当な呼び方をします。ノンちゃんは、結婚したみーちゃんの家で飼われていますが、時々遊びに来てくれます。お互い最初は慣れませんでしたが、かわいい妹のように思えてきて、いつ来てくれるか最近は待ち遠しいくらいです。

私は時々、動物病院に行きます。そこにはおじいちゃん先生がいます。ちょうど1年前、この先生が「この子にとっては、飼い主さんの愛情が一番のごちそうなのです」と言ってくれたことを思い出しました。素晴らしい先生だと思います。家族に連れられて健診に行くのですが、相変わらず難しい顔をしています。それが信頼される秘訣なのかもしれません。

先生に言われるまでもなく、家族は私を大事にしてくれています。ですから、暑くて大変な毎日でも、幸せだなと思うこのごろなのです。(2010・7)