小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1279 hana物語(20) 白露の季節

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はな、ありがとう。

はなが来てくれたおかげで

私たちの世界が広がって

豊かな毎日になったよ。

一緒にお散歩することで

花の香りや季節の変化を感じたり。

人間以外の動物がかわいいと

思えるようにもなった。

はなには感謝することばかりです。

また会おうね。

本当に本当にありがとう。

(はなへの感謝の詩 次女作)

猛暑の夏がうそだったように9月に入ると気温が下がり、湿度も低くなった。空にはいわし雲が浮かんでいた。庭のほおづきは真っ赤に色づき、夜にはコオロギが鳴くようになった。二十四節気の「白露」(大気が冷えてきて、露ができ始めるころ)は、9月8日だった。夕方、一人で遊歩道の散歩に出た。一周6.4キロ。1時間以内に歩くのは容易ではない。かつてはそれができたが、加齢とともに難しくなった。

ラジオを聴きながら歩いた。TBSではニュース番組をやっていた。2020年の五輪が東京に決まったことにも触れている。プレゼンテーションで安倍首相が話した「汚染水は0・3キロ平方の範囲内で完全にブロックされている」は、うそだと言い切る解説者もいた。メディアの多くは、招致決定に浮かれているが、被災地の現実は何も変わっていないのにと思う。

IOC総会のプレゼンテーションでは、被災地・気仙沼出身のパラリンピック陸上選手、佐藤真海さんの「スポーツの力」を訴えるスピーチは感動的だった。その気仙沼では、大震災の象徴とも言われた鹿折地区に津波で打ち上げられ、これまで残っていた漁船「第18共徳丸」の解体工事も始まったというニュースをやっていた。

遊歩道の散歩も終わり近くになって、hanaと同じゴールデンレトリーバーに出会った。さりげなく通り過ぎようとすると、リードを持っていたこの犬の飼い主の女性から声を掛けられた。「hanaちゃんのお父さんですよね」と。それから、質問攻めにあった。彼女は別のゴールデンレトリーバー、ハナちゃんの飼い主からhanaが死んだことを聞いていたのだが、若いと思っていたhanaの死が信じられない様子だった。

私はhanaの闘病生活を説明した。すると、彼女は「うちの犬も動物病院にかなりお世話になっているのです」と話した。現在8歳で元気そのものに見えるこの犬も、大型犬の宿命を背負っているのだろうか。

この犬と会う直前、2匹のゴールデンレトリーバーを連れた人を見た。その1匹は目の周辺と足の部分の毛が黒く変色していて、歩くのも辛そうだった。だが、このゴールデンレトリーバーの飼い主たちは、自分の犬を大切にしているに違いない。それは寄り添って歩く、飼い主と犬の姿をみれば一目瞭然だった。私たち家族も、冒頭の次女の詩のようにhanaを愛し、一緒に送った時間は宝物だと思っているのである。