小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1277 hana物語(18) 月命日に写真集が完成

画像hanaがこの世を去って2013年8月30日で1カ月が過ぎ、「月命日」を迎えた。仏教用語では「祥月命日」という、一周忌以降の故人の亡くなった月日(命日)と同じ月日のことを指す言葉もあり、ややこしいが、いずれにしても時間の過ぎるのは早く、あの悲しみの日から多くの時間が流れたわけである。 この日の朝、日課になっているラジオ体操に出かけた。8月30日は金曜日であり、子どもたちにとっては夏休みのラジオ体操参加の最終日だった。いつもより人数が多いと思ったら、第2体操が終わると、子どもたちにお菓子が配られた。これが楽しみで参加していた子どもたちが少なくないだろう。カメラを構えたお母さんもいて、いつもより活気ある時間が過ぎた。 第1体操の途中、散歩中のハナちゃん(ゴールデンレトリーバー)と飼い主がやってきて、私に近寄ってきた。体操を中断し私が撫でてやると、ボールを口にくわえたハナちゃんは大喜びで体を摺り寄せてきた。まだ、私の体のどこかに、hanaのにおいが残っているのだろうか。いつもの散歩コースである、調整池周囲の遊歩道では、hanaは人気者だった。ハナちゃんの飼い主も同じ名前のhanaをやさしい目で見つめてくれた。散歩途中に立ち止り、hanaを撫でてくれる人もいた。 その一人である女性と29日の朝、遊歩道で会った。女性はhanaの姿がないことに気が付き「hanaちゃんはどうしたのですか」と聞いてきた。「実は7月末に病気で死んでしまいました」と答えると、この女性は見る見る顔を歪め、泣き顔になった。hanaのために家族以外の人が泣いてくれたことに私はうれしかった。hanaを飼ってよかったと思った。 その散歩道では、いつも悠々としたスタイルでボルゾイ(ロシア原産の大型犬)が歩いている。16歳になったというこの犬は、以前はhanaを連れた私たちを見ると避けるようにしていたが、hanaの死後には近寄ってきて、顔を撫でてやると、いい表情をするようになった。hanaの分も長生きしてほしいと願いながら、ボルゾイと別れる。(注、  回で書いた通り、この犬はそれから4カ月後にこの世を去った) それにしても8月の暑さは異常だった。気象用語では最高気温が35度以上の日を「猛暑日」というそうだが、猛烈な暑さだし、酷い暑さ(酷暑)といっていいほどだった。朝の方はまだ楽だとしても、夕方の散歩は犬たちにとってはつらい日々が続いた。道路はほぼアスファルトで覆われているので、夕方の散歩は遅くなってからしかできない。 人間だけでなく、ペットたちにもとっても2013年の夏は暮らしにくい季節だった。生きていれば、「ハアハア」と荒い息を吐いていたはずだから、この年の8月の猛暑を経験しなくて済んだhanaは幸せだったかもしれないと、思ったりする。 以前、hanaの写真集をつくったことがある次女は、改めて写真を選び出し、再度写真集をつくる作業を続けていた。デジタルカメラ時代になって久しく、hanaの写真は数えきれないほど残っていた。その中から60数枚だけを選び、短いコメントをつけて小さな写真集にするのだという。成長ぶりが記録された一枚一枚を選ぶのは、hanaとの日々を振り返ることでもあるだろう。時折、次女は「hanaに会いたいなあ」とつぶやいていた。それは家族全員の共通した思いでもある。 そんな思いを託した写真集も8月の終わりには完成した。そして、私たちの許を旅立ったhanaは秋が過ぎ、冬を迎えれば地球に輝く光を送る一等星・シリウスの一員になるのである。