小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1204 氷上に映えた羽生の凛々しさ 仙台人の気質とは

画像
ソチ五輪の男子フィギュアで金メダルを取った羽生結弦仙台市泉区の出身だ。プロ野球で活躍し、1月に野球殿堂入りを果たした佐々木主浩(かずひろ)も同じ泉区の生まれで、高校(東北高校)は羽生の大先輩にあたる。羽生が生まれる以前のことになるが、私もこの地域に住んだことがある。期間は短いとはいえ、これまで各地で暮らした中で特に強い愛着を持っているのは、豊かな自然がすぐ近くにあるからだろうか。 武光誠著「県民性の日本地図」(文春新書)によると、典型的な東北人の特徴は「誠実で義理人情にあつい働き者という気質を持ち、純朴でまじめ」とあり、さらに仙台市がある宮城県の県民性については次のように記している。 「中世までは農村特有の気質(閉鎖性)が残っていたが、江戸時代に入り全国的流通圏に組み込まれ、商才を身につけ外交的になる。近代になると、仙台市周辺に新しいもの好き、おしゃれ好きの気質が目立ち、伊達者の伝統が残っている。これは伊達政宗の派手好きを受け継いだ仙台藩士の気風からくるものだともいわれる」 羽生は東北高校に在学中の2011年3月11日、地元・泉区にあるアイスリンク仙台のリンクで練習中に東日本大震災に遭遇、避難所で暮らしたこともある。このリンクは地震で壊れ使えなくなったため、羽生は復興支援チャリティーアイスショーに参加しながら、別のリンクで練習を重ね、1年半半前からはバンクーバー五輪女子フィギュアの金メダリストだったキム・ヨナのコーチだったブライアン・オーサーに師事している。こうした試練を経て、耐えることには他の選手よりも強くなったのかもしれない。 男子のフリーが始まって、最後のグループの演技の時間前、6人の選手の練習風景がテレビ画面に映し出された。解説の本田武史さんは「全員が緊張している」と話したが、ひときわ羽生の緊張ぶりが伝わってきた。テレビ画面で見る限り、練習中にまともなジャンプができていなかったからである。そして、本番。出来はよくなかった。カナダのチャンに逆転されるのではないかと思ったのは私だけではなく、家族も心配そうな顔をした。 しかしチャンもミスを重ね、得点は羽生を下回った。ワールドカップで連戦連勝を重ね、金確実といわれたスキー女子ジャンプの高梨沙羅も風が味方をしてくれず、4位に終わった。オリンピックは特別な舞台であり、メディアの取材攻勢も一段と強いから、選手の精神的重圧は格別なものなのだろう。 ところで、大阪に住む友人は「冬尋坊日記」のブログで「氷上に映えた水色の衣装」と題して、羽生の衣装について書いている。 「細身に淡い水色の衣装。氷上の颯爽した滑りに目を見張る」「受賞後に『震災復興に役立ちたい』と語った羽生は仙台市泉区出身。秋にドライブしたことがある。湖の向こうに雪を冠した泉岳が望めた。氷上の羽生は仙台のうっすらとした空の色(水色)を着て滑っているように見えた」 羽生の血の中にも、おしゃれ好き、誠実でまじめという仙台人の気質が入っているのだろう。そして19歳という若さから伝わる凛々しさが羽生の魅力でもある。 写真は、羽生の地元・泉区にある将監沼 調べてみたら、仙台に関するブログを何本も書いている。それだけ仙台に愛着があるのだ。 冬尋坊日記以降は私の過去のブログです。 冬尋坊日記 私が住んだ街3・仙台市 青葉城の思い出 私が住んだ街7・仙台編続き 新緑の季節 センチメンタルジャーニー  運転手の絶妙の解説 これぞプロ 仙台を走る「るーぷる」 若者は虹をかけられるか  「いつかX橋で」を読む