小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1203 相次ぐ人気車種のリコール ソチ五輪の陰で

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ソチ五輪のニュースが大きく扱われている中で、11日と13日の新聞に日本の代表的自動車メーカーであるホンダとトヨタの人気車種、ハイブリット・フィット(ホンダ)、プリウストヨタ)のリコールの記事が載っている。対象の車はフィットが8万1000台、プリウスは日本だけでも99万7千台だという。こんな記事を見ていると、本当に安心して車に乗っていいのか不安になる。若者の車離れが加速するのも当然かもしれない。 国土交通省の発表によると、フィットは、7速DCT型自動変速機の部品で滑らかに動かないものがあり、ギアがかみ合わずトラブルの原因になり、踏切で立ち往生したりするトラブルが昨年12月以降356件あった。一方プリウスは、モーターを制御するソフトに不具合があり、急加速すると電子部品に過剰な電流が流れて破損する。モーターとエンジンを制御するハイブリットシステム全体が止まり、走行不能になる恐れがある。運転席の警告灯がつき、時速20キロ程度でしか走れなくなったり、停車すると走り出せなくなったりするトラブルが2011年5月以降308件あった、という。 かつて欠陥車という言葉があった。なぜか最近はほとんど見かけない。メディアがこれを使わなくなった理由はよくわからない。「下町ロケット」で直木賞を受賞した」池井戸潤の本「空飛ぶタイヤ」(2006年、実業の日本社)という作品がある。大手自動車のリコール隠し事件(三菱自動車工業のタイや脱落事件がモデルという)を題材にしたフィクションだが、販売数でトップを争う人気車種のリコールに、つい池井戸の本を思い出してしまった。 2つの車ともそれぞれ300件以上のトラブルの報告があったというが、重大事故にはならなかったのだろうか。昨年9月に発売したフィットの最新モデルは同じ部品のリコールと自主改修を2回やっているそうだから、今回が3回目となる。プリウスの方はフィットのリコール発表から一日置いてのリコール発表で、そこに意図的なものが感じられる。 国土交通省自動車局・リコール課という部門があるそうだ。そのホームページをみると、2012年度の自動車不具合情報が出ている。同省の自動車不具合情報ホットライン(こんなものがあるとは知らなかったが)に5767件の情報が寄せられ、うち整備不良やユーザーの誤使用などを除いた3141件を「有効な不具合情報」として、統計に載せている。そこには最近の傾向として「不具合情報件数の推移状況は、三菱自動車の不正行為が明らかとなった平成16年度をピークに減少傾向であったが、平成21、22年度は、トヨタ自動車ハイブリッド車の制動装置不具合をきっかけとしてリコールに対する社会的な関心が高まった結果、不具合情報件数が増加し、その後は収束したと考えられる」という短い解説が書かれている。 しかし、今回のようなリコールが相次ぐと、自動車の不具合に対し、社会的関心が収束したとは決して言えないのではないか。ユーザーは、車は安全と信じて利用しているからだ。 写真 首都高速を走る車(記事とは無関係です)