小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

1103 花束を拾う姿に浅田の区切りを思う 挫折を乗り越えたスケート人生

画像フィギュアスケート女子の浅田真央が、ソチ冬季五輪シーズンとなる来季限りで現役を引退する意向だというニュースが流れた。東京で行われていた世界国別対抗戦のフリーのあと「ソチ五輪を集大成としていい演技ができるようにしたい」と、引退表明と受け取れる発言をしたという。 フリーの演技のあと、リンクに投げ入れられた花束を一生懸命に拾う姿を見て、何かがあると思っていた。花束を拾ったのは、彼女自身の区切りの気持ちが表れたのだろうか。 2月に神戸を旅した帰りの新幹線の同じ車両で、浅田のコーチの佐藤信夫さんと一緒になった。小柄だが、ただ者ではない雰囲気があった。天才スケーターと言われながら、挫折を繰り返す浅田を辛抱強く育ててきた佐藤コーチ。世界国別対抗戦のショート、フリーとも切れのない演技で個人5位に終わった浅田をどのように思ったのだろう。テレビではいつもの柔和な表情だったが、浅田以上に悔しかったに違いない。 スポーツ選手の競技人生は、さまざまだ。モーターボートレースで最近、71歳の加藤峻二が史上最年長で優勝し、2012年のロンドン五輪馬術には加藤と同じ71歳の法華津寛が出場した。プロ野球でも中日の山本昌投手が47歳で勝ち星を挙げ、これも史上最年長の記録を更新した。だから、現在22歳の浅田が来シーズンで引退と聞くと、「まだやれるのではないか」と思う。 しかし、それは第三者が勝手に思っているだけで、浅田のこれまでのひた向きに氷と格闘したスケート人生を見ていると、これ以上引き止めることはできない。 浅田には、特有の「華」がある。それが見る者に感動を与えるのだ。その姿が来季限りとなると、やはり寂しい。 これから、シーズンオフを送り、あと300日でソチ五輪が始まる。日本のフィギュアスケートのレベルは高いので、五輪の出場権を獲得するのも一苦労に違いない。いまは燃え尽き寸前の状態にある浅田だが、来シーズンは一皮むけた新しい姿を見せてくれることを願うばかりだ。