小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

995 五輪から消えたフェアプレー精神 なでしこよ大丈夫か ロンドン五輪(2)

ロンドン五輪はテレビのはしゃぎぶりとは裏腹に、盛り上がりがないと感じる。メダルを意識するあまりに、スポーツのフェアプレー精神とはかけ離れたプレーも目立つ。バドミントンの女子ダブルスで故意に負けようとした4チーム、8人が「無気力試合」をしたという理由で失格になった。このニュースを見ていて、女子サッカーなでしこジャパンの予選最後の試合も大同小異だと思った。 バドミントンの女子ダブルスで、失格になったのはベスト8に進んだ韓国2組、中国、インドネシア各1組の計4組だ。予選の一次リーグでベスト8進出が決まってから組み合わせを有利にするためサーブをわざとミスしたりして、安易に失点、故意に負けるプレーをしたそうだ。中国のペアは、相手側のアピールで審判が注意をしたが、改まらなかったというからひどいものだ。 スポーツはいかなる場合でも、全力を挙げて戦うから美しく、見る者に感動を与える。しかし、昨今は勝負にこだわる結果、力や技以外に駆け引きが大きな要素になっている。もちろん、勝つにこしたことはない。それにしてもバドミントンのケースはさびしい。それを同じアジアの選手たちがやったことが残念でならない。 つい先日、なでしこジャパンの佐々木監督の言葉に違和感を抱いたことを思い出した。決勝リーグ進出が決まった後、南アフリカ戦でなでしこは0―0で引き分けた。試合後佐々木監督は、決勝トーナメントを有利に進めるためこの試合は勝たずに2位通過を指示したことを明らかにしたのだ。 決勝トーナメントが行われる2つの会場のうち1つはかなり遠くにあることや、トーナメントに出てくる相手を意識して、選手たちに勝たなくていいと指示したらしいのだ。 これに対し、賛否両論が出ている。当然だと思う。佐々木監督は正直だからつい口にしてしまったのだろうか。 青臭いと言われるのは承知の上だが、私はこんなふうに考えた。「日本はW杯のチャンピオンだ。汚い駆け引きはせずに堂々と試合すればいい。全力プレーができなかった選手がかわいそうだ」と。 東京では体操男子個人で内村航平が金メダルを獲得したという号外が配られていた。内村については、友人がブログで「見苦しい内村航平の頭髪」という記事を書いている。団体で銀に終わった時の感想だが、私も同じ印象を持った。 だが、個人で金を取ったら、乱れ切っていた彼の頭髪も少し整ったように見えた。気のせいなのか。内村は団体戦の不調を乗り越え、圧勝した。駆け引きなしのフェアプレーであり、柔道の松本と同様、すがすがしさを感じた。「体操は努力の競技です」という内村の言葉がいい。彼は天才ではなく、努力の人なのである。