小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

865 風評被害を吹き飛ばせ 届いた福島の20世紀梨

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福島市に住む知人から、大きな梨が届いた。市内の「斎藤梨園」で生産された「20世紀」という品種だ。箱の中には梨とともに「梨園たより」という案内、フルーツを中心にした福島市のガイドパンフ、「消費者の皆さまへ」という佐藤雄平福島県知事名の安全確認書、そして梨についての放射性物質の測定結果を示す「放射能汚染検査報告書」の4つの資料が入っていた。 福島は原発事故収束の見通しが立っていない。農産物への風評被害が続く中で、こうした書類を添付しなければならない果樹農家の悔しさが伝ってくる。 「梨園たより」にはこんなことが書かれている。 「福島の一番の被害は原発放射能汚染です。当梨園原発より約67キロに位置しております。春先にははたして農作物は作ることができるのだろうかと不安でしたが、時期が来れば花が咲き、花粉交配をすれば実を結び、摘果作業の忙しい日々。例年通り収穫の秋を迎えることができました。放射能汚染結果報告は別紙の通りですので、安心してお召し上がり下さい」 そして「放射能汚染検査報告書」では、放射性ヨウ素131、放射性セシウム(134、137)とも検出されなかった―と明記されている。福島県内では9月に二本松市内の農家の米、ひとめぼれから予備検査で基準を上回る放射性セシウムが検出されており、農家の不安は大きい。画像 知人も斎藤梨園の梨が心配だと話していたが、検査の結果、問題がないことが判明したので、胸をなでおろしているだろう。 夕食後、家族ともに早速20世紀梨を味わった。甘くて、みずみずしい。皮をむいて手に取ると、果汁がこぼれてくるほどだ。そのしずくは、原発事故で泣きながら故郷を去った人たちの悔し涙のように思えた。 夜、福島に住む姉から電話があった。「新米が2、3日で収穫になるが、どうするか」と。「お願いします」とすぐに返事をした。予備検査で、問題がなかったので電話をしてきたのだった。基準を超える放射性セシウムが検出された二本松とはかなり離れているが、検査結果が出るまでは心配だったと思われる。 原発事故が与えた影響は広範だ。数え上げたらきりがない。そして、これからどんな道筋を経て解決に向かうのか。残念なことに政府、経済産業省東京電力、研究者を含めて明快に答えることができる人はだれもいない。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ けさ、人生の先輩の一人、高橋紘さんが亡くなったという連絡を受けた。一貫して皇室問題を研究していた。私の周辺から、懐かしい人の姿がまた消えた。寂しい思いでいっぱいだ。