小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

691 プリウスの車両接近装置 技術陣も想像力が必要

トヨタ自動車はベストセラーカー「プリウス」の「車両接近通報装置」を近く発売すると発表した。

ハイブリット車のプリウスは、モーターでの走行時に、エンジン音がしない。だから歩行者は車が近付いていることに気づかず、特に障害者には危険だとニュースになった。それを受けて、トヨタはこうした装置を開発し、有料で提供するというのだ。

車の騒音はないにこしたことはない。その意味で、プリウスの設計は本来の車の姿といえる。しかし、日本の道路事情はよくない。主要道路には歩道があるが、幹線道路から住宅街に入ると、歩道はなく、狭い道路が一般的だ。車はそんな道路でもお構いなく走行する。

プリウスのように、速度を落としたときに音が静かな車は、そんな狭い道路を利用する歩行者、中でも視覚障害者には危険な存在だ。そこで、トヨタ国交省ガイドラインに沿って、新しい装置を開発したのだ。

トヨタはこの装置を有料(取り付け手数料を入れると約2万だという)で販売すると発表した。だが、既存のプリウスのオーナーが、金を払ってまで直ちに装置を付けるとは思えない。社会問題となり、対策をとる以上はすでに販売した車には無料で取り付けるくらいの度量がトヨタにあっていいのではないか。

トヨタの優秀な技術陣でも、静音に伴う弊害を予測できなかった。「創造力」はあっても「想像力」が足りなかったということだろうか。技術陣にも、想像力をというのは無理なのだろうか。そんなことはないはずだ。

この問題は、本来ばかげた話である。車を運転する人は、狭い道路ではとりわけ慎重な運転を心掛けるべきだ。ところが昨今の車を見ていると、徐行運転の標識がある場所でも、猛スピードの車が目立つのだ。それは車だけではない。人が歩いていてもスピードを落とさない傍若無人の自転車が多く、夜間に無灯火運転の自転車も横行している。

いずれにしても今回の問題は、車の開発に当たっては燃費の向上という性能面だけでなく、道路事情や歩行者対策という社会的要因を加味する必要性があることを示している。それが想像力なのだと思う。