小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

673 梅雨明けの朝 透明感あふれる風景

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早朝、いつものように犬の散歩に出る。暑くなければ、約1時間なのだが、最近は犬も「はあはあ」とつらそうなので、30分から40分程度に短縮している。その短縮コースは、風を感じながら調整池を一周するものだ。ふだんなら、歩き始めると、汗がふき出すが、けさはそれほどでもない。調整池やその後ろの森がくっきりと目に入る。 北海道や信州ならこの時期でも湿度はそう高くない。それゆえに透明感のある自然を堪能できる。そうした現象が関東に位置するわが家の周辺でも見られたのだ。あわてて、カメラを構えて森を写す。その後ろには赤いとんがり屋根がある。まるで、北海道の美瑛の景色のようだ。 画像このとんがり屋根は、近所の小学校なのである。いつも見慣れた風景だ。だが、けさばかりは透明感があって街や自然が別の景色のように見えたのだ。昼のニュースで、気象庁が「九州南部と東北を除いて梅雨明けしたとみられる」と発表したことを報じていた。そうか、暑い夏の到来なのかと思う。きょうを言葉で表現したら「夏の光」というのだろうか。遮るものが消え去り、強い光が自然界を覆い、陰影を施す。その光は「光の春」といわれる2月のころとは、一味違う強さを感じる。 画像高村光太郎智恵子抄で「智恵子は東京には空が無いといふ、ほんとの空が見たいといふ。・・・・・・智恵子は遠くを見ながら言ふ。阿多多羅山の山の上に 毎日出ている青い空が 智恵子のほんとのそらだといふ」と書いた。この詩があまりにも有名になり、狭い空間と汚れた空気に覆われた東京やその周辺には「ほんとの空はない」と地方の人は思っているのかもしれない。 しかし、きょうの空は青く、雲も白かった。森の緑は深く、赤いとんがり屋根も近くに見えた。ここには「ほんとの空があった」と言っていいだろう。7月も半ばを過ぎ、わが家のhanaを含めた犬たちの暑さとの闘いはこれからが本番だ。