小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

528 自然界の勢力地図 季節の植物の共存関係

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毎日の散歩コースに調整池周辺の遊歩道が入っている。1周約800メートル。自転車がほとんど通らないので、犬の散歩には最適だ。調整池に水があるのは全体の3分の1程度で、残りの部分は雑草が生えたままになっている。 秋になるとこの雑草地ではススキとセイダカアワダチソウが生存競争し、その勢力分布は変化していた。それがことしで終了した感がある。自然界の不思議な共存関係というのだろうか。まるで線でも引いたような棲み分けが見られるのだ。 散歩の途中にこの調整池で2つの植物の攻防を見るのが楽しみだ。一時は外来種のセイダカアワダチソウの方が優勢だった。しかし、いつしかススキが攻勢をかけ、アワダチソウは、土手付近から撤退していった。その撤退ぶりは見事としか言いようがない。アワダチソウたちは円をつくってびっしりと咲き、ススキの攻撃に耐えようとしているのだ。そのほかに逃げ残った数本のアワダチソウが孤軍奮闘し、土手周辺のススキの中に黄色い花を咲かせた。 この街に引っ越してもう20年以上が過ぎた。最初のうちはアワダチソウの元気さに舌打ちをしたくらいだった。秋には調整池の周辺で黄色い花が咲き乱れた。しかし、天敵のススキも負けてはいなかった。粘り強さで次第にアワダチソウを土手周辺から次第に駆逐していった。そしてことしは、調整池周辺で2つの植物の闘いは終止符を打ったように見える。 アワダチソウは、池のわきの大きな円の中でしか咲いていない。その周囲には「ここからは絶対に出さないぞ」というばかりに、ススキがびっしり生えている。それは人工的に手を加えたと思えるほど整然としている姿なのだ。 自然界の勢力関係は、なにやら人間の世界にも似ている。戦後、日本政治をリードしてきた自民党は国民から乖離し、民主党に追い詰められて、虎の子の政権を奪われた。調整池のアワダチソウは円内で結束を固め、勢力維持に努めているが、いまの自民党にはそうした知恵はないようだ。「奢れるもの久しからず」と言われたにもかかわらず、自民党は奢れ過ぎてしまったのだと思う。アワダチソウのように結束を固め、勢力を盛り返すのはたぶん容易ではないだろう。 そんなことを思いながら朝の散歩が終わる。台風が去り10月のすがすがしい天気が戻ってきた。45年前の1964年10月10日も快晴で、東京五輪の開会式が行われたことを思い出した。。