小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

519 宗教戦争の長い時間・アルハンブラ スペイン・ポルトガルの旅(6)

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中世、キリスト教勢力を追い出し、スペインに進出したイスラム勢力は、長い間栄華を誇った。しかし、巻き返しを狙うキリスト教勢力側は各地でレコンキスタ(国土回復運動)という戦争を続ける。それは息の長い戦いだった。 その結果、イスラム支配として最後に残ったのがグラナダ王国だった。王国が170年の歳月をかけてつくったのがアルハンブラ宮殿だ。その豪華さは息をのむほどだ。 グラナダ王国は、キリスト教勢力の侵攻に備え、この宮殿の建築に乗り出した。その後歴代の王によって増築が繰り返され、豪華さに磨きが加えられた。1492年、イスラム側はついに陥落し、宮殿はキリスト勢力の手に落ちる。 その後、アンダルシア地方が、歴史の中に埋没した時代、ジプシーたちのねぐらになっていたこともあったという。アルハンブラを含むグラナダ周辺が脚光を浴びるのはスペイン内戦後の1960年代のことで、宮殿はその中心的存在として世界各国からの観光客が後を絶たない。 宮殿は、どこを見ても飽きが来ない。写真にある「アラヤネスの中庭」はその後ろにある「大使の間」という建物が池に映って美しい。「ヘネラリフェ」と呼ばれる庭園は豪華で、糸杉の中庭という迷路のような散歩道に入ると、急に涼しくなった。植物も種類も豊富で「アジサイ」があるのには驚いた。 話の抜群に面白い現地のガイドは、ボケの花を指して「ハポン」と呼ばれていると説明した。フランシスコ・ザビエルが1549年に初めて日本の地を踏んだ後に、日本から伝来したために、スペイン語で日本を意味する「ハポン」と名付けられたというが、真偽は不明だ。 アルハンブラといえば、スペインの作曲家F・タルレガのギター曲「アルハンブラの思い出」が知られている。この宮殿を流れる水の音律をモチーフにトレモノ奏法をする曲だ。庭園には山から流れる水を引いた水路があり、その流れの音を聞いていると、この曲の旋律が浮かんできた。