小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

495 不況で相次ぐ花火大会中止 でもコチラの方は

各地で花火大会が相次いで中止になっているという。大型の大会には2000万円から5000万円の費用がかかるが、不景気で企業を中心にした協賛金が獲得できず、中止に追い込まれてしまうのだ。花火は郷愁を呼ぶ伝統行事だ。それが開催できないほど、日本社会は脆弱になっているのだろうか。

そうとは思えない。毎朝の犬の散歩コースに小さな神社がある。一昨年、この神社周辺を突風が襲い、社殿は倒壊し、樹齢数百年のけやきも倒された。鎮守の森は、自然の脅威により破壊された。周辺の住民たちが、この神社の復興を目指して寄付を募り、社殿を新築した。

社殿の近くに、新築に当たって寄付をした人たちの名前を記した石碑が建っている。それを見ると、個人の寄付として500万円が4人、以下300万円、100万円、50万円と寄付者の名前が記され、最後の方に、町内会の寄付金として1000万円と刻まれている。

その金額を合計すると、ゆうに5000万円は超える。小さな社殿だ。私はこれほどの金額はかからないと思ってみていた。しかし、これだけの金額が集まったのだ。不況の時代だが、意義があることには、協力する人たちが少なくないのだと思う。

「ファンドレイジング」という言葉が日本でも普及しつつある。寄付による活動資金を集めることをいう。これまで日本のNPOは、ともすれば自力で活動資金を集めることには力を入れていなかった。しかし、いまやそういう時代ではなく、ファンドレイジングは必至なのである。

神社の復元を見て思うのは、意義があると認めるものには、こんな不況下にあっても寄付をする人たちが存在するということだ。花火大会だって、大人も子どもも心に残る「夏の風物詩」なのだ。こういう時代だからこそ、継続してほしいと思うのは、私だけではないはずだ。