小径を行く

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。筆者・石井克則(ブログ名・遊歩)

344 フェルメール展はラッシュ並みの人出 ある日の上野の森

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10月の上野公園は、さわやかな季節とあってかなりの人出でにぎわっている。JRを降りて動物園方向へと歩くと、右手に「国立西洋美術館」がある。 フランスの設計家ル・コルビュジエによる建物は、世界遺産候補となり来年9月にその可否が決まる。そんなことをこの建物の前を通って、初めて知った。さらに動物園方向に進み右方向に足を向けると、東京都美術館があった。ここではいま人気のオランダの作家「フェルメール展」が開かれており、ラッシュアワーの電車のような混雑ぶりを経験した。 フェルメールは、17世紀にオランダ・ハーグ近くのデルフトという小都市で生まれ、30数点しか残さない寡作の画家だったが、10数年前から世界的に急に脚光を浴びるようになり、今回はそのうち7点が都美術館で展示された。ほかにも同じ時代に活躍したデルフトの画家たちの作品が展示されたので、多くのファンが集まったのだ。 「光の天才画家とデルフトの巨匠たち」というのが今回の展覧会のキャッチフレーズだが、フェルメール研究者の小林頼子目白大学教授は、この画家の人気の理由を「作品に光学画像を思わせる特徴があることも現代人の心をとらえるのかもしれない」と分析する。さらに、作品数が少なく、希少性が高いことが人気の理由でもあるそうだ。ということは、一挙に7点もの作品が集まった今回は、人気が出るのは当たり前なのかもしれない。 それにしても、あまりにも人が多くて、1つの絵の前でじっくり眺める余裕はない。一番の傑作といわれる「ワイングラスを持つ娘」にはなかなか近づけない。人の肩越しに何となく見た。これでは光学画像以前の話だ。。次から次に押し寄せる人の輪はフェルメールの人気ぶりを実感させる。他の画家たちの絵はフェルメールほどではない 先月、ツアーでドイツに行った際、たまたまコースに入っていたドレスデン国立美術館・アルテ・マイスター(古典絵画館)を見学した。ここにも「窓辺で手紙を読む少女」など数点のフェルメールの作品があったが、今回ほどの人の輪はなかった。フェルメールだけでなくラファエロレンブラントら数多くの有名画家の作品が展示されているが、人垣で絵を見ることができないという状況はなかった。この美術館からも、今回は2点が提供されたという。 たまにしか美術館に足を運ばない私には、日本の美術ファンの多さには驚くばかりである。絵画に対する確かな目を持っているのだろう。それは、これらの人たちの感性を豊かにする。そんなことを思いながら、フェルメールの世界から抜け出すと、上野公園の広場では九州物産展が開かれていた。日本らしくて面白い光景だった。